【川崎トップアスリート対談】B1川崎・篠山竜青 × 女子バレーNEC・古賀紗理那 中止のIH、全中 中高生に伝えたいこと

 新型コロナウイルスの影響で、全国高校総体(インターハイ)や全国中学校体育大会などの中止が決まった。男子バスケットボールの川崎ブレイブサンダースで主将を務める篠山竜青(31)、女子バレーボールのNECレッドロケッツでプレーする古賀紗理那(23)も心を痛めている。中高生に、今だからこそ伝えたいメッセージがある。

【古賀】せっかく苦しい練習を乗り越えて、試合に出られるというチャンスをもらったのに、機会がなくなってしまうのは悔しいと思う。でも、苦しい練習をしてきたことはこれからの自分に一生残る。次の目標に向かって頑張ってほしい。

【篠山】すごくつらい状況ですよね。自分も学生時代にインターハイとか大きな大会に向けて頑張っていた。未曽有の事態で機会が奪われるのは素直にかわいそうだと思う。

 -2016年のリオデジャネイロ五輪の直前で落選した古賀選手にとって、目の前から目標が消えた経験と似ている。

【古賀】比べるのは難しいですけど、目標にしていたものがなくなるのは苦しいし、精神的にもつらい。でも、そこで立ち止まっていても何も変わらない。次の目標に向かうしかないと思います。

【篠山】こういう困難にぶつかったとき、未来の自分のことを考えて、何カ月後か何年後かは分からないですけど、「こういう困難があったからこそ今の自分がいるんです」と言えるように、何とか前向きな気持ちで取り組むことが大事。今できること、今しかできないことをしっかり考えて、未来の自分に近づくために腐らずに頑張ってほしい。

 -とはいえ、一人で頑張ることは難しい。

【篠山】結局はモチベーション。この悔しさをガソリンに変えられるか。誰かのせいにして、立ち止まってしまうのか。そこは難しいけど前向きに捉えてほしい。

 -互いに幼少の頃から全国で活躍してきた。「努力」と「才能」、トップ選手になるために、どちらが必要だと思うか。

【篠山】どっちもです。

【古賀】私もそう思います。

【篠山】僕が思うのは、頭を使えるかどうか。ただシュートを500本打つ努力をしても、何も考えないで打っても意味がない。ちゃんと考えて、試合のどんな場面で打つシュートなのか、思考を巡らせることで変わってくる。

【古賀】小学生の時の監督がすごく厳しく、一人でずっとスパイク練習する時があって、「きついからこそ早く終わらせたい」と勝手に考えるようになって。自分自身が成長しているのも分かるようになった。そうやって気づけることも才能だと思います。

 -アスリートの先輩に何か聞きたいことは。

【古賀】ファン対応がそんなに得意じゃないんですけど、心掛けていることはありますか。

【篠山】プロ化する前からそうなんですけど、みんなお客さんがいっぱいいる中でプレーしたい。「どうしたらこの人たちがもう一回来てくれるかな」と考えたとき、プレーはもちろん、笑顔で手を振って目が合ったから、握手がすごく優しかったからという理由で「もう一度アリーナに行って応援しよう」と思ってくれたら一枚のチケットにつながって空席が埋まり、自分まで応援してくれる。そのサイクルを常に考えていて、気づいたら神対応になっていたというのはあります(笑)。

【古賀】確かに。何かすごく勉強になりました。

【篠山】良かったです。

 -最後に、なかなか先を見通せないが新シーズンへの思いを。

【篠山】こういう状況になったからこそスポーツの価値やありがたみを感じることができたので、来季にぶつけられるように良い準備をしたい。家族4人とも古賀選手のファンなので、NECレッドロケッツの応援にも行きたいと思います。

【古賀】それはうれしいです。ホームゲーム開催はそれほど多くないんですけど、会場が埋まるとモチベーションも上がりますし、声援が私たちの背中を押してくれる。しっかり頭を使って今の時期を過ごして、次のシーズンを戦い抜きたい。

 今回の取材ではビデオ会議アプリを利用。新型コロナウイルスが収束したら、あらためて東京五輪に向けた対談をする約束を交わし、ともに笑顔で画面の前を離れた。

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