資料20万点、閲覧伸びず 有効活用促す工夫必要 開設3年、熊本地震デジタルアーカイブ

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県が一般公開している「熊本地震デジタルアーカイブ」。20万点を超える収集資料のうち約13万点を公開している

 熊本地震に関する写真や文書などの記録をデータ化し、一般に公開している熊本県の「デジタルアーカイブ」が4月で開設3年を迎えた。これまでに集めた資料は当初目標の20万点を突破した。一方で利用は伸び悩んでおり、専門家は「次の展開を考える時期に来ている」と指摘する。

 大勢の被災者が身を寄せ合う体育館、支援物資の配布時刻が書き足された避難所の掲示板、道路や農地の被害をまとめた自治体の会議書類…。県のアーカイブには、地震発生初期の混乱ぶりを克明に伝える資料が並ぶ。

 事業は2016年9月、資料の散逸を防いで熊本地震の記録を後世に残そうと、有識者会議の提言を受けて着手した。市町村や民間にも協力を呼び掛けて写真や行政文書を中心に幅広く収集した。

 デジタル化した資料は、記録された日時や地名など検索時に必要なデータを入力して整理。県はシステム構築に3550万円を投じ、維持費に年間670万円をかける。

 収集と並行して、県が自ら記録する作業も続ける。18年から被災者135人の証言を集めた「語り部」動画を収録。阿蘇大橋(南阿蘇村)の崩落現場や益城町の復興まちづくりなども“定点観測”で撮影している。「アーカイブに興味を持ってもらう工夫が必要」(危機管理防災課)という狙いだ。

 ただ、閲覧件数は減少傾向にある。公開を始めた17年度の2万7223件から18年度は1万7201件と4割減に。検索しやすいシステムに改良した19年度は2万3519件まで回復したが、20年4月は1306件で前年同月比7割減だった。

 東日本大震災など各地のアーカイブ事業に携わる東北大災害科学国際研究所の柴山明寛准教授(災害情報学)は「熊本のアーカイブは現段階で素材の集まり。有効活用に向け、資料の使い方も含めて利用者に発信してほしい」と助言。今後必要な取り組みとして、大学や教育委員会を巻き込んだ活用方針の策定や教職員向けワークショップなどを挙げる。

 先進地の岩手県は、準備に約3年を費やして17年3月にアーカイブを開設した。資料は「防災」「教育」「交流人口(拡大)」といった用途別に分類して整理。県の担当者が毎年、アーカイブの使い方を教職員に伝える出前授業にも取り組む。陸前高田市に昨年開館した「東日本大震災津波伝承館」は、展示資料の約8割がアーカイブからの提供という。

 熊本県でも、東海大阿蘇キャンパス(南阿蘇村)などを中核拠点として震災遺構を巡る「震災ミュージアム」の整備が進む。柴山准教授は「震災の教訓をより分かりやすく伝えるためにも、ミュージアムとアーカイブの連携は欠かせない」と話す。(中尾有希)