豪州SC:元王者ジェームス・コートニー、シリーズ再開前にフォード・マスタングでの復帰を発表

 VASCヴァージン・オーストラリア・スーパーカーの2010年ドライバーズチャンピオンであるジェームス・コートニーが、6月のシリーズ再開に先立ちカムバックを宣言。タイトルスポンサーのMilwaukee(ミルウォーキー)撤退により活動休止を決めた23Red Racingの枠を活用してTickford Racingに加入し、フォード・マスタングをドライブすると発表した。

 キャリア初期には日本にも活躍の場を求め、2003年の全日本F3選手権タイトルを皮切りに、フォーミュラ・ニッポンや全日本GT選手権、そしてスーパーGTの初年度シーズンも戦ったコートニーは、2006年に豪州大陸へと凱旋しStone Brothers Racingに加入。

 BA型ファルコンからBF型と乗り継ぎ、Dick Johnson Racing(現DJR Team Penske)に移籍して2年目の2010年にはFG型で年間5勝を挙げ、念願のドライバーズタイトルを獲得した。

「その翌年、ホールデンのファクトリーチームであるHRT(Holden Racing Team/現Walkinshaw Andretti United)に移籍したわけだから、フォードを降りたときの僕はチャンピオンだった。振り返れば、ブルーオーバルにはいくつもの良い思い出があるよ」と語ったコートニー。

「そのことは僕を暖かい気持ちにしてくれる。明らかにフォードとは良い結果を共有し、ホールデンとの9年間を経て再び彼らの元に戻ることはすべての肯定的な記憶を呼び覚ますものだ。そして願わくば、新たな“Boost Mobile Ford Mustang”でさらに大きな成功を収めたいね」

 現在39歳となるコートニーは、2020年シーズンに向け心機一転。新チームのTeam Sydneyに移籍してリードドライバーの役割を担う計画だった。しかし開幕戦のアデレード400を終え、運営母体となるTEKNO Autosports代表のジョナサン・ウェブとの見解相違が表面化し、わずか1戦限りで議論の余地を残した電撃的チーム離脱を発表していた。

「過去数カ月に起こったことを考えれば、その推移に満足することはできないよね」と続けたコートニー。

拠点を移したTEKNO Autosportsの新チームに合流し、旧知の仲でもあったジョナサン・ウェブ代表とともに戦う計画だったジェームス・コートニー
開幕直前に自身のパーソナルスポンサー“Boost Mobile”のカラーリングを採用してレースに挑んだが、バトル中にウォールの餌食となるなど苦しい展開に

「2月の終わりから今に至るまで、僕のキャリアと世界はまるで上下が逆さまになったかのような状況だった。でも今回の契約で、その苦境から脱することができて本当にうれしく思う」

「僕らが一緒に達成できることには多くの可能性があると思う。個人的に僕を支援してくれるBoost Mobileと、Tickford Racingの信じられないほど優秀なレースチームと一緒に働けることを心から楽しみにしている」

 現在、2020年のVASCシーズンはF1開幕戦オーストラリアGPとの併催だった第2戦の土壇場でのキャンセルにより中断しているが、その後の推移を経て23Red Racingとウィル・デイビソンが残した空席のレースシートを、コートニーが引き継ぐ形となった。

「確かに、ウィルと23Redの面々に起きた事態はとても残念なことだ。我々が直面する事態はとても厳しいが、ドアが閉まればまた別のドアが開くのも事実だ。世界的な情勢に対して『Boost Mobile Racingの成長を後押ししてくれ』という一言が僕を支えてくれている」

 その23Red Racingは2018年創設の若いチームでありながら、2020年はウィル・デイビソンのシングルカー体制で参戦し、Tickford Racingのサポートを得てフォード・マスタングを投入。

 開幕戦のアデレード400では2ヒートともにトップ5フィニッシュを果たすなど躍進を予感させたが、不確実性を増す世界情勢を受けてタイトルスポンサーの工作機器メーカー、Milwaukeeが撤退を決めたことで悲運の活動休止に追い込まれた。

「我々はチーム創設以来、フロントランナーになるべく全力で組織の成長に取り組んできた。しかし残念なことに、前例のない時間に直面して枠組みの再評価といくつかの厳しい決断を余儀なくされた」と、チームのステートメントに記した23Red Racingのフィル・マンデー代表。

「2020年の始まりは一貫して表彰台を争う兆候を見せ、誰もが望む方向性を示していた。それだけに、予定よりも早く旅を終えるのは非常に悲しいことだが、我々はここまでの業績と成果を誇りに思っている」

過去数シーズンは移籍も含め厳しい状況が続いたコートニーだが、ここへきて“常勝マシン”を手にした
「ここまでの努力でどれほど素晴らしいパッケージを構築してきたかを思えば、今の状況を言葉にするのはとても難しい」と心情を吐露したウィル・デイビソン

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