なぜフルネーム呼び︖『愛の不時着』『梨泰院クラス』で韓ドラにハマって気になったこと

 ネット動画配信サービス「Netflix」で公開中の韓国ドラマが⽇本でも⼤ヒットしています。特に『愛の不時着』と『梨泰院クラス』は、従来の韓ドラファンの枠を超えて⼤きな話題を呼んでおり、筆者もハマってしまったひとり。ただ、そこでふとした疑問がわきました。

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 かく言う筆者(27歳男性)も、韓国ドラマには元々抵抗があり、母親世代や若い女性が観るものだと決めつけて触れずに生きてきました。しかしこの自粛期間の“おうち時間”で、何か新しいものに触れてみようと思い、話題の「愛の不時着」、「梨泰院クラス」を試しに観てみたところ、いとも簡単に虜になってしまい、「ピノキオ」、「ロマンスは別冊付録」、「私の名前はキムサムスン」…と立て続けに韓ドラを追う日々が始まりました。

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 そうして韓ドラの作品を楽しんでいると、気になったことがありました。度々、作品中で人々が相手のことをフルネームで呼んでいるのです。たとえば「愛の不時着」では、ヒョンビン演じる北朝鮮軍の将校リ・ジョンヒョクが「ユン・セリ!」とソン・イェジン演じるヒロインの名を叫ぶ場面が何度も観られます。また出版社が舞台の作品「ロマンスは別冊付録」でも、イ・ナヨン演じる「カン・ダニ」という名前がフルネームで何度も呼ばれています。「カン・ダニさん。鉢植えに水を。」といった風に。

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 これを日本に置き換えた場合少し違和感がありますよね?公共の場でフルネームで名前を呼ばれるのは、病院の待合室ぐらいで、基本的には「佐藤さん」、「鈴木さん」などと呼びます。これには理由があるに違いない。そこで、気になるこのワケについて神戸三宮の韓国語教室「セットン」の代表イ・スンソンさんに伺いました。

 「韓国では、公共の場ではフルネームに日本語の『さん』にあたる『씨(シ)』を付けて呼ぶのが礼儀です。一方、日本語では『苗字+さん』で呼ぶことが一般的ですが、韓国語で同様に『キム씨(シ)』と呼んでしまうとこれは生意気で、失礼な表現となってしまうので注意が必要です。フルネームで呼ぶことは社会的なマナーですね。」

 ちなみに、日本の苗字は、約30万種に及びますが、韓国では300種にも至らないほどで、その中の三大苗字である金(キム)さん、李(リ)さん、朴(パク)さんが全人口の半分近くを占めているそうです。仮に韓国人の集団に「キムさん!」と苗字だけで呼びかけた場合、振り返るのはきっと一人ではなさそうですね。フルネームで呼ぶことを忘れないようにしたいです。

 このように韓国ドラマは、日本とは全く違う文化や習慣に触れられるという点でも興味深いものです。各動画配信サービスで様々な作品が観られるので、一度ご覧になってみては?

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