男闘呼組 ― 今こそ再評価したい80年代最強のアイドルハードロックバンド

1988年 8月24日 男闘呼組のデビューシングル「デイブレイク」がリリースされた日

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ジャニーズの異端児ともいえるロックバンド、男闘呼組

2019年は、テレビでかつてのジャニーズアイドルの映像を目にする機会が多かった。それらの番組を観て脳裏に浮かんだのが、ジャニーズの異端児ともいえるロックバンド、男闘呼組のことだった。

アイドル的なロックバンドでは、僕が以前書いたコラム『前代未聞のアイドルバンド、レイジーまさかのヘヴィメタル宣言!』で取り上げたレイジーあたりを想起するが、両者の成り立ちは異なる。レイジーの場合、元々アマチュアで活動していたバンドをスカウトしてアイドルに変身させたが、男闘呼組は、事務所主導で音楽的スキルを持ったタレントを組み合わせて “つくられたバンド” だった。

男闘呼組が華々しくデビューして、歌番組に数多く出演した頃を記憶している。メンバー達と年令がほぼ “タメ” な僕は、「同世代のアイドルが、ロックバンドをやれるはずがない」と、当初は斜に構えて彼らを観ていた。

80s HM/HR の王道、デビューシングル「DAYBREAK」

けれども、Mark Davis こと馬飼野康二作曲のデビューシングル「デイブレイク」を聴くたびに、「いい曲だなあ」と密かに思ったのも事実だ。それもそのはず、ディストーションの効いたギターリフ、キャッチーで哀愁漂う覚えやすいメロディ、派手なギターソロ、キラキラと効果的なキーボード等、まさに僕の大好きな80s HM/HR の王道といえる曲調だったからだ。オリコン1位、レコード大賞最優秀新人賞に輝いたこの曲は、いつしか僕のカラオケでの定番になった。

暫く時が流れ、彼らが『夜のヒットスタジオ』に出演したときのこと、いつもより演奏がやけに生々しいことに気づいた。僕が観た限りでは、それまで “オケ” をバックに当て振りしていたと思われる曲を、その日は明らかに生演奏しているではないか。楽器やバンドをかじった人間ならその違いはすぐにわかる。正直、お世辞にも上手くなかったが、ある意味で衝撃だった。なぜなら、彼らが一介のアイドルバンドを脱皮し、自らのチカラでロックし始めたように僕の目には映ったからだ。

その後も、シングルが出るたびに歌番組で彼らの楽曲を耳にしたが、『紅白歌合戦出場』などで人気のピークを迎えて以降、次第にテレビでの露出が減っていったこともあり、いつしか彼らのことを忘れてしまった。僕が男闘呼組の音楽に再び触れたのは、すでに93年に実質的に解散して長い月日が経ってからだった。

質の高い楽曲群、硬派なロックファンにも充分にアピール

改めて男闘呼組がデビューからわずか約5年間で残した音楽を振り返ってみると、まず純粋に “いい曲” が多いことに驚く。どの曲もメロディラインに強いフックがあり、絶妙に転調するサビの展開など、繰り返し聴いても飽きることがない。初期は馬飼野康二の作品が大半を占め、中期以降はメンバー自身の楽曲も増えていくが、その質の高さには思わず唸らされる。

HM/HR ファンの視点からみると、特に初期から中期にかけては、80s HM/HR 好きの感性をくすぐる要素が満載だ。ボン・ジョヴィ、デフ・レパード、ラット、ヨーロッパをはじめとしたバンドへの、判る人には判るオマージュ的なメロディやアレンジが次々に登場し、思わずニヤリとしてしまう。

成田昭次、高橋一也をメインとした若さ溢れる歌唱と歌謡曲チックな歌詞も、洋楽のハードロック色の濃い楽曲に意外にもピタリとハマっている。岡本健一、前田耕陽を含めたハモり具合も絶妙で、曲に合わせてシンガロングしたくなること請け合いだ。

「アイドルならではの甘さ」と「ハードロックならではの激しさ」の絶妙なさじ加減が、ジャニーズのファンのみならず、硬派なロックファンにも充分アピールできるバンドとして支持された要因だろう。

成長とともに広がる音楽性の幅、メンバーの音楽的ルーツは?

自作曲中心の4thアルバム以降は、アーティストとして成長していく中で次第に音楽性の幅も拡がり、スローで聴かせる曲や、粗削りなロックチューンも増えていった。この頃のライヴ映像を見ると、メンバーのアビリティも向上し、演奏する様子も自信に満ちた表情に映る。その頃のTV出演時の動画内で語る、彼らの音楽的ルーツが興味深かったので列挙してみたい。

■ 成田昭次:子門真人、ベンチャーズ、クールス、ストレイ・キャッツ、MSG、UFO、スティーヴィー・レイ・ヴォーン、ロバート・クレイ、マーク・ノップラー
■ 高橋一也:渡辺真知子、ツイスト、キャロル、アナーキー、スターリン、セックス・ピストルズ、ローリング・ストーンズ、ジョン・レノン、ピンク・フロイド、ハンク・ウィリアムス Jr.、リンダ・ロンシュタット、リッキー・リー・ジョーンズ
■ 岡本健一:エルビス・プレスリー、オスカー・ピーターソン、ピンク・フロイド、ラヴ・アンド・ロケッツ、グレイトフル・デッド、チェット・ベイカー、トム・ウェイツ
■ 前田耕陽:オフコース、浜田省吾、デュラン・デュラン、ヴァン・ヘイレン、ジャーニー、ジョー・コッカー、ジェフ・レビン、リチャード・マークス

男闘呼組の音楽性とはかけ離れたセレクトも多くて面白い。何より音楽について熱く語る彼らはとても楽しげだ。

硬派な音楽ファンから “つくられたバンド” への風当たりは強い。そうした “大人の事情” で生まれたバンドに、僕も仕事で触れる機会があったけど、その有り様はそれぞれに異なる。例えば、周囲のお膳立て通りの音楽を続ける者もいれば、自らの意思で努力を重ね、いつしか作り手側の想像を超えていく者もいる。男闘呼組は明らかに後者であり、だからこそ、時代を超えて再評価すべき存在なのだと思う。

信じられないことに、現時点で彼らの音源の多くが廃盤なのは残念な限りだ。近い将来にストリーミングで配信され、気軽に聴ける日を待ちたい。そして、80s HM/HR を愛する多くの人には、色めがね抜きで彼らの残した音楽に触れてもらいたいと願っている。

※2019年8月13日に掲載された記事をアップデート

カタリベ: 中塚一晶