サンダーキャット『イット・イズ・ホワット・イット・イズ』 歌で聞かせるスーパー・ベーシスト

 サンダーキャットことステファン・ブルーナーはロサンゼルス出身のベーシスト。1984年音楽一家に生まれ16歳にしてプロ・キャリアをスタート。ずば抜けたテクニックが注目されエリカ・バドゥ、フライング・ロータスらと共演。11年にソロ・アルバム・デビュー。15年ケンドリック・ラマーのアルバムに参加、同作品がグラミーを受賞し一躍その名が世界に知られることになります。

 当初はフュージョン系の超絶技巧のべーシストとして話題になりましたが、自ら歌うことも好きなためソロ2作目以降はヴォーカリストとしても非凡な才能をみせるようになります。さてフライング・ロータスと共同プロデュースした通算4作目にあたる本作はジャズ・フュージョンの作品というよりは、繊細でエモーショナルなヴォーカルが印象的な“歌もの”になっています。100以上のデモテープをもとに作られた曲は過去作品に比べ格段にメロディアス、ジャンルを超えたアンビエントなポップ・アルバムと言っても過言ではないでしょう。

(ビートインク・2200円+税)=北澤孝

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