ザ・ウィークエンド『アフター・アワーズ』 クールでアンビエントなR&Bで全米を制覇

 カナダはトロント出身の30歳、ザ・ウィークエンド(本名エイベル・テスファイ)の4枚目のアルバムです。2010年、デモ音源をネットにアップしたのがスタート。2015年セカンド・アルバム『ビューティー・ビハインド・ザ・マッドネス』が全米1位、グラミー賞を受賞し一躍世界のトップ・スターとなります。R&Bシンガーとして紹介されていますが、彼のスタイルはフィジカルでソウルフルなR&Bとは一線を画したクールなもの。繊細なファルセット・ヴォイスが特徴でオルタナティブR&Bといわれています。

 ポピュラー・ミュージックはルーツが同じであっても時代によって姿が変わります。マイケル・ジャクソンをリスペクトする彼のルーツはマイケルと同じであっても表現はよりアンビエントで現代的なものになっているのです。さて今作ではR&B以外の様々なポップスのルーツを感じさせる作品が目立ちます。80年代のダンス・ポップ、エルトン・ジョンの「ユア・ソング」を引用した70年代風のポップバラードなどバラエティに富んだアルバムに仕上がりました。

(ユニバーサル・2500円+税)=北澤孝

© 一般社団法人共同通信社