<いまを生きる 長崎コロナ禍> 広がる支援の輪 “困窮”大学生に100円定食を

 「未来をつくる学生を助けたい」。新型コロナウイルスの影響でアルバイト先を失い、生活に困窮する大学生らを食事面で支援しようと、長崎市内の飲食店で支援の輪が広がっている。
 5月12日付の本紙で、モヤシやタマネギなど安価な野菜で食いつないで生活している大学院生らの窮状を報道した。

 

■100円で笑顔に

 「この現状を見過ごすわけにはいかない。記事を見て居ても立ってもいられなかった」。そう話すのは、長崎市内で石油販売事業などを手掛けるフジオカの藤岡秀則代表取締役(51)。記事が掲載されたその日の午前中に社員と協議。運営する「バラモン食堂」(同市万屋町)で困窮した大学・短大・大学院生や専門学校生らを応援するため、100円で定食を提供することを決めた。20日に「ぎばれ学生!バラモン定食」として開始した。「ぎばれ」は五島の方言で頑張れを意味する。
 提供する定食は、大盛りご飯に食欲をそそる揚げ物やサラダなど。量だけでなく、栄養バランスも考慮した。「おなかいっぱいで笑顔になってほしい」と店長代理の河邊康明さん(42)。2人の子を育てる父親でもあり、わが子と学生たちの姿を重ね合わせ「学生の笑顔をきっかけに町のにぎわいを取り戻したい」と“親心”をのぞかせる。
 100円の定食を求め、困窮していない学生が来る可能性もある。「それでもいい。これから未来をつくる学生さんのために、いま笑顔になってもらえることをしたいんです」。藤岡さんは力を込めた。
 藤岡さんが13日、自身のフェイスブックに思いをつづった後、その思いに共感した市内のかまぼこ店、鮮魚店、青果店が食材の無償提供を申し出た。支援の輪は広がっている。

学生支援定食を始めたバラモン食堂の河邊さん=長崎市万屋町

 バラモン食堂が学生を支援するため100円で提供する定食は5月20日から1カ月間の予定。時間帯は午後5時から8時まで。学生証が必要。月曜、第3火曜定休。

■朝昼食を提供

 コロナ禍の前から、満足に食べられない若者を支えている店もある。万屋町の「喫茶ニューポート」。マスターの坂口末之さん(74)は40年以上にわたり、店で皿洗いなどを手伝ってもらう代わりに朝と昼の食事を無償で提供している。「良い給料はあげられないけど、困っている人を守ってあげたい」。これまでに50人を超える学生らを支え、社会へ送り出した。
 長崎での生活に憧れて4月に岡山から来た20代の女性は、新型コロナの影響もあり仕事が見つからずにいたところ、坂口さんと出会った。今は店で皿洗いをしながら朝昼のご飯を食べさせてもらっている。「手伝いながら地元の人に会うことができるのも楽しい。就職を決めて、お客としてマスターに会いに来たい」と話す。
 これからも食べることに困った若者はいつでも迎えたいと言う坂口さん。「ご飯は食べさせてあげる。その代わり、あいさつや礼儀はしっかりね」。そう言って、ドリップしたてのコーヒーをカップに注いだ。

喫茶ニューポートのマスター、坂口さん(左)と皿洗いを手伝う女性=長崎市万屋町

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