運送業関係者の葛藤 対策徹底で各地を往来、「偏見」に不安も

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関東などを往来して生活物資を運ぶ大型トラック=佐世保市口の尾町

 県境を越えて、長崎県と都市部を日々行き来する運送業の運転手たちが不安を抱えている。新型コロナウイルスの感染状況は一定落ち着きを見せているものの、8都道府県では依然、緊急事態宣言が発令中。対象地域への移動は自粛が求められるが、それでも、市民生活を支えるため物資を運ばなければならない…。関係者は「偏見を持たれないか」と心配する。
 「帰宅すると家族に消毒液を頭から吹き掛けられたと言う同僚もいる。仲間内では笑い話にしていますよ」。長崎市に住むトラック運転手の40代男性は自嘲気味に語る。
 関東、関西圏などを3~6日かけて往復し、主に加工食品を運搬。荷物の積み降ろし時はマスクの着用や消毒作業を徹底し、細心の注意を払う。同居する20代の娘は勤務先の病院から「父親との距離を考えるように」と指示された。男性はそれに従って、小まめに検温したり、家族では最後に入浴したりするなどの感染対策を取ってはいる。ただ、「頭で理解できても、気持ちが納得しない自分がいるんですよね」。
 県内でも新型コロナの感染者が増え始めた4月上旬ごろ。県北の運送会社で働く40代女性は、小学生の娘が通う放課後児童クラブのスタッフの対応に違和感を覚えた。「お仕事は大変でしょう」「職場ではどんな対策を」と何度も尋ねられた。女性は「自分たち家族は警戒されている」と察した。その後、自らクラブの利用は控えると申し出た。学校の臨時休校は解除されたが「物流関係者の子どもは差別されないだろうか」と不安がよぎる。
 九州運輸局によると、県内では約600事業者が一般貨物運送の許可を受けている。県トラック協会は「短距離を含め運転手は1万人ほどはいる。それぞれに家族がある」とする。
 「裏方として社会を支える運送業がライフラインの一つという世間の認識はまだ低い」。こう語るのは全国に物流網を持つ佐世保市の運送会社「ミラージュ」の西辻松好会長。業界は感染症対策に万全を期していると強調し、「人の流れを止めても、物が動けば暮らしは成り立つ。物流を支えるドライバーとその家族を温かく見守ってほしい」と求める。