実はデマはなかった?新型コロナウイルス感染拡大での集合心理を分析②【SNSデータ分析編】

©公益財団法人東京大学新聞社

新型コロナウイルス感染症はいまだ終息のめどが立たず、多くの人がこれまでの日常とは違う生活を強いられ続けている。その中で、トイレットペーパーの買い占めや真偽不明の情報の拡散など異常な現象が見られている。感染症流行時の人々の行動について、今回のコロナ禍を例に社会心理学とSNSデータ分析の二つの側面から迫る。?

(取材・友清雄太)

①社会心理学編はこちらから!

善意の拡散の前に一考を

では、以上のような心理状態に多くの人が陥ったとき、具体的にどのようなプロセスでデマは拡散されるのだろうか。Twitterを例に、計算社会科学を専門とする鳥海不二夫准教授(工学系研究科)に取材した。

トイレットペーパー不足のデマは具体的にどのようなプロセスで拡散されたのでしょうか

どこかの地域でトイレットペーパーの品薄があったことは間違いありません。それを見た人が「マスクだけじゃなくトイレットペーパーもないのか」と呟いたり「中国から入ってこないからじゃない?」といったツイートがあったりする一方で「トイレットペーパーの生産の中国依存度は低い」などの反論もありました。この時点で明らかにデマと言えるツイートはありませんでした。

しかし、議論が進んでいくうちに「『トイレットペーパーが品切れする』というデマが存在する」ことになっていきました。それを受けて自治体の長など影響力のある数人が「トイレットペーパーが品切れするというデマがあるから注意して」とツイートしました。それが一気に拡散され「デマの拡散が原因でトイレットペーパーが不足している」と多くの人が考えてしまったのです。

今回は、本来デマが存在しないのに「デマがあるから気を付けよう」と注意喚起されたことで逆に誤った情報が拡散してしまったようです。犯人とされた人の元ツイートは全くと言っていいほど拡散されていません。恐らく検索でたまたま引っかかったために犯人扱いされたのだと思います。

真偽不明の情報を拡散してしまう原因は

手間をかけずに善良な行為をしたい「スラックティビズム」という心理が働くからでしょう。リツイートをすると労力を掛けずに社会貢献をした気分になれますから。

基本的に情報拡散の原動力は悪意ではなく善意が大半です。「入手した有益な情報を誰かに伝えないと」と思ってしまうのです。

SNSを利用する上で注意すべき点は

SNSの特性上、デマは流れるものと考えた方がいいです。特に、扇情的な情報に接した際に、その情報が発信された理由を一度立ち止まって考えることが重要です。

鳥海 不二夫(とりうみ ふじお)准教授(工学系研究科) 04年東京工業大学大学院博士課程修了。博士(工学)。名古屋大学助教などを経て、12年より現職。