JAXAが開発中の科学衛星・探査機のうち3機の打ち上げ時期が変更される

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は5月19日、2021年度に打ち上げを予定していた科学衛星や探査機のうち3機の打ち上げ時期が変更されたことを明らかにしました。同日開催された第56回宇宙開発利用部会において報告されています。対象となるのは、X線分光撮像衛星「XRISM」、小型月着陸実証機「SLIM」、および深宇宙探査技術実証機「DESTINY+」です。

■XRISMとSLIMは2022年度、DESTINY+は2024年度に

X線分光撮像衛星「XRISM」を描いた想像図(Credit: JAXA)

1つ目のXRISMは2016年に打ち上げられたX線天文衛星「ひとみ」(運用終了)の後継機として、NASAや欧州宇宙機関(ESA)などとも協力しつつ開発が進められている衛星です。当初は2021年度に打ち上げが予定されていましたが、搭載される機器の試験中に不明事象が生じていることから、2022年度の打ち上げを目指すとしています。

なお、姿勢制御スラスターの異常噴射によって打ち上げから間もなく運用を終了することになった「ひとみ」の教訓をもとに、XRISMでは異常噴射時の対策などが施される予定です。

小型月着陸実証機「SLIM」を描いた想像図(Credit: JAXA)

2つ目のSLIMは月面へのピンポイント着陸技術を検証するための探査機で、従来のように「着陸しやすい場所を選んで降りる」のではなく「着陸したい場所に降りる」ことを目指しています。SLIMのプロジェクトは今のところ順調に進められているとのことですが、相乗りするXRISMの打ち上げが2022年度に変更されたため、SLIMの打ち上げ時期もあわせて変更されることとなりました。

深宇宙探査技術実証機「DESTINY+」を描いた想像図(Credit: JAXA/カシカガク/Go Miyazaki)

3つ目のDESTINY+は小惑星「ファエトン」(フェートンとも)のフライバイ探査を目指し、ドイツ航空宇宙センター(DLR)などと協力して開発が進められている探査機です。ファエトンは毎年12月にみられる「ふたご座流星群」の母天体(流星のもとになる塵を放出した天体)とされる小惑星で、フライバイ時にファエトンの表面を詳細に観測することが計画されています。

DESTINY+にはイオンエンジンが搭載されますが、現在地球に向けて飛行中の小惑星探査機「はやぶさ2」から得られたイオンエンジンに関する知見を反映させる必要性が生じたことと、ドイツから提供される観測機器の開発スケジュールに遅れが生じていることから、打ち上げ予定時期が2021年度から2024年度に変更されています。

Image Credit: JAXA
Source: JAXA
文/松村武宏

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