不動産業者の9割が「影響が出ている」コロナ不況の中、地域ビルダー次の一手

 政府は5月21日、大阪府、京都府、兵庫県の3府県について、緊急事態宣言の対象から解除すると発表した。これで緊急事態宣言の対象地は、東京など首都圏4都県と北海道を残すのみとなり、新型コロナの感染拡大も一応の収束が見えつつある。

 しかし、新型コロナウイルス禍が日本の経済活動にもたらしている影響は、未だ終息を見ない。飲食店等もさることながら、国の基幹産業の一つでもある不動産業への影響が深刻だ。

 不動産情報サイト「LIFULL HOME'S」等の住生活情報サービスを提供する株式会社LIFULLが5月20日に公表したインターネット調査の結果によると、回答のあった加盟店企業500社のうち、95.4%の不動産事業者が新型コロナウイルス感染症で「企業活動に影響が出ている」と回答、前月より増加していることが分かった。また、35.5%の不動産事業者が、前年比50%以上のマイナス予測をしているという。

 東京などの緊急事態宣言が解除されても、しばらくは厳しい状況が続くだろう。とくに住宅展示場の閉鎖や来場者の激減によって、大手ハウスメーカーのダメージは大きい。しかし、その一方で、在宅勤務が続いたことでWebの活用などが活発になり、新しい活路を見出そうとする動きも現れている。

 案内ロボットを導入するなどして、業界初の無人モデルハウスを展開したり、緊急事態宣言下でも積極的な情報発信を行ってきたアキュラホームに、今のハウスメーカーが抱える問題点とアフターコロナの不動産業界の展望について聞いてみた。

 同社は日本最大級の工務店集団ジャーブネットを主宰することでも知られるが、大手のハウスメーカーやその下請けを担う工務店が新型コロナの影響にあえぐ中、やり方次第では小回りの利く地域ビルダーにとって大きなチャンスが巡ってくると見ているようだ。

 地域ビルダーはどうしても、顧客に与える「安心感」という面においては、巨大な資本力を持つ大手のハウスメーカーには及ばない。しかし、地域の状況をリアルタイムで把握して、顧客ニーズに寄り沿った極め細かなサービスを提供できるという強みがある。

 そこで、アキュラホームでは地域ビルダーに対してサポートすることで、顧客の安心感を獲得し、太陽光発電設備や全館空調システムなど、大手に負けない商品力を高めようとしているという。

 また、5月12日にはアキュラホーム社長の宮沢俊哉氏自らが登壇し、経営者限定のWEBセミナーを開催。同社の経営幹部、スマートアライアンスメンバー、一部の地域工務店などが参加したが、工務店の強みと大手ハウスメーカーの強みをあわせ持ったアキュラホームの経営ノウハウは、地域の工務店にとっても学ぶところが多くあり、参加した工務店経営者たちのモチベーションも高まったようだ。

 同社は、大手メーカーと比べてもWEBなどの最新デジタル技術を積極的に導入している企業だ。しかし、アフターコロナの経営で最も重要だと思うことという質問を投げてみると、返ってきたのは「社員一人一人が強くなること。そして、その力を合わせて、チームで立ち向かうこと」という、いかにもアナログな答えだった。このバランスのとり方が、同社の一番の強みであり、これからの企業経営に必要なものなのかもしれない。(編集担当:藤原伊織)

住宅展示場の閉鎖や来場者の激減によって、ハウスメーカーのダメージは大きい

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