YouTubeで「離島」配信 どんな思い胸に、撮影を続けるか 島の営みを世界に 「生きた証」記録

動画の編集作業をする深浦さん=新上五島町

 日々、国内外から多種多様な動画が投稿される「ユーチューブ」。長崎県内の離島にも、島ならではの暮らしやイベント風景、企画動画などを配信する人たちがいる。どんな思いを胸に、撮影を続けているのか。活動の一幕をのぞいた。

 今月上旬、新上五島町の弁当店。地元で動画配信を続ける8人グループ「五島人」のリーダー、深浦慎吾さん(31)と副リーダー、中田明雄さん(31)が店主にカメラを向けた。「お薦めのメニューは?」
 この日は、新型コロナウイルス禍の中、テークアウトに取り組む飲食店を訪ねる取材。トレードマークの黒いTシャツを着た2人は雑音や背景に気を配りながら、インタビューや調理の様子をてきぱきと撮影していった。約30分の取材を受けた弁当店「グリデキッチン」の宇戸淳子社長(45)は「完成が楽しみ」と笑みを浮かべた。
 撮影した動画は自前のパソコンで編集。「主役」は当然、登場してくれた地元住民だ。映り込んだメンバーの姿はカット。BGMやテロップを加え、動画が完成する。
 グループは、家業を継ぐためUターンした深浦さんが「島外から人を呼び地域を元気にしたい」と2018年に設立。「インターネットを使えば、島の営みを世界に発信できる」と考え、動画配信を始めた。伝統行事やイベント紹介、住民と「インスタ映え」する島の風景を探す企画など、約40本の動画を制作。休日を使い週1本の投稿を目指す。
 動画で島の魅力を伝え、「地域にお金が落ちる仕組みにつなげたい」と語る深浦さん。島で婚活イベントを開いたり、五島列島全体に活動範囲を広げたり…。「五島人」の夢は膨らむ。

     ◆

 ありのままの島暮らしを配信する人もいる。昨春、両親の古里五島市に移住し、高齢者施設を営む片山亀寿さん(40)。ユーチューブチャンネル「KameVlog」で、家族と過ごす日々を公開している。
 とある休日。「海に入りたい」。わが子のそんなひと声で、片山さん親子は三井楽町にある小さな港に向かった。
 海に飛び込んだ片山さんが、岸壁に立ちつくす小学2年の次男を呼ぶ。「大丈夫、おいで!」。勇気を出して飛び込んだ次男に「気分はどう?」とインタビュー。ほほ笑ましいワンシーンをカメラに収めた。
 「撮影は、いつもこんな感じです」と片山さん。ドライブや釣り、友人との飲み会…。ありのままの五島の魅力を伝えようと、凝った企画や編集はしない。
 片山さんは幼い頃から島を何度も訪れたが、移住して島の美しさをあらためて知った。「動画を通じ、観光気分や島暮らしを味わってほしい」と願う。何より動画は、家族や島民との大切な思い出を記録する手段でもある。「生きた証し、と言えるかもしれません」

調理の様子を撮影する中田さん(奥)=新上五島町有川郷、グリデキッチン
息子が海に飛び込む様子を、小型カメラで撮影する片山さん(右)=五島市

© 株式会社長崎新聞社