経済活動と地域生活 どう“共存” ソニー新工場建設

健康管理策 住民が提案

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大型クレーンが立ち並び、大規模工事が進んでいるソニー新工場=諫早市津久葉町

 スマートフォンのカメラなどに使う半導体画像センサーの増産を目指し、ソニーが進める諫早市の長崎テクノロジーセンター新工場建設。多数の工事従事者の新型コロナウイルス感染予防策を巡り、危機感を抱いた近隣住民が大規模な健康管理が可能な対応策を施工会社に提案。企業の経済活動と住民生活が“共存”できる道を模索している。

 「多数の県外ナンバーが一時駐車し、建設現場へバスで行き来している。車中泊する姿も見掛ける」-。市内で初の感染者が確認された直後の4月中旬。多良見町の民間駐車場近くの住民らが眉をひそめた。全国で緊急事態宣言が発表され、県外との往来自粛が求められる中、市中感染の可能性を恐れたからだ。
 そこで、同町の自治会長らが施工会社と意見交換。出席者によると、約500人が工事に従事し、現場入場前の検温や「3密」を回避した作業などが徹底され、車中泊も禁じられた。
 しかし、不安は残った。来年春の完成までに最大2千人余りが従事し、約300人を収容する宿泊施設が市内に建設中という。「クラスター(集団感染)の温床になるかもしれない。企業側の危機管理が問われ、経済的損失も大きいはず。医療機関が限られている諫早で発生したら、家族も含めて命が脅かされる」。住民側は、施工会社に宿泊施設の安全対策をただすとともに、市の関与を求めた。
 「民間企業同士の工事契約。事業活動を妨げる可能性もあり、市の関与方法を研究したい」。市は当初、一歩引いた姿勢に終始。工事中断で工期が延長された場合、発注元や施工会社の負担増を懸念した様子だった。
 ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング(熊本)の広報担当は本紙取材に対し、「工期や完成時期に変更ない」と回答。「現場の感染予防策は施工会社から報告を受けている。宿泊施設に関しては現時点の回答は控えたい」とした。施工会社の大成建設(東京)の広報室は「個別工事の内容は通常、答えていない」と回答した。
 住民の要望を耳にした宮本明雄市長は今月中旬、工事従事者の感染予防に向けた情報共有をソニー側に要請する考えを示した。「企業の事情も住民の心配も分かる。ただ何か起きてからでは遅い。健康面での情報交換などをお願いする」
 住民側は並行して宿泊施設について、スマートフォンで体温や健康状態を一元管理し、関係者に通知するシステムの導入や安全管理者の配置などを施工会社に提言。多良見町の自治会長の一人は「企業や自治体と対立するのでなく、感染リスクを減らすためにともに英知を絞り、手を尽くすことがこれからの時代、必要だろう」と話し、施工会社との意見交換を続ける。