【新型コロナ】在日米軍感染、公表されぬ情報 合同委で政府把握も「安保上の理由」

横須賀に配備されている原子力空母ロナルド・レーガン(2020年5月5日)

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、在日米軍基地でも複数の感染者が出ている。米海軍横須賀基地(神奈川県横須賀市)では軍人6人の感染が明らかになっているが、それ以上の感染者がいるとの米メディア報道も影響し、米軍が情報を隠しているとの批判も上がる。ただ、各自治体は日米合同委員会の覚書に基づいて感染者情報を把握しており、「安全保障上の理由で個別の感染者数を発表しない」という米政府の方針を受けた日本側が、非公表としている側面がある。

 米国防総省は3月末、作戦上の観点から米軍基地や部隊での感染者数を個別公表しない方針を表明。在日米軍司令部(東京都福生市)も神奈川新聞社の取材に、「戦闘即応性を保つ運用上、軍からは感染者数を公表しない」と説明する。

 一方で、基地がある自治体の各保健所は、新型インフルエンザなどを経て合意に至った日米合同委員会の覚書に基づき、新型コロナ感染者数や、外部との接触の有無などの情報を基地内の病院と共有している。

 外務省は同盟国である米国の方針を踏まえ、「公表を控えるように自治体に連絡した」としており、県も県内の保健所から報告を受けているが公表できない情報があると明かす。県はその上で「国が情報収集し、公表できる情報は出してほしい」とも要望する。

 こうした状況に対し、横須賀の市民団体などは「公表と一部報道で感染者数に差がある。日米合同委に基づく情報交換も適切になされているのか疑問」などと反発している。専門家の間でも「日米同盟を考慮すると、米軍部隊の感染者数公表は日本の安全保障にとっても不安材料となる」と非公表に理解を示す見方がある一方、「国防総省の方針にかかわらず米側に情報公開を求めるべきだ」との指摘もある。

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