堀江貴文「僕たちの世界はもう、働かなくていいフェーズに移行した」

民間ロケット事業や和牛ビジネスなどを手がける堀江貴文さん。仕事のほとんどをスマホでこなし、長い間パソコンを開いていないといいます。堀江さんはどのようにスマホを使い、お金を稼いでいるのでしょうか。著書『スマホ人生戦略 お金・教養・フォロワー 35の行動スキル』(学研プラス)から一部抜粋して紹介します。


イスラエルの歴史学者、ユヴァル・ノア・ハラリの書いた『サピエンス全史』(河出書房新社)を読んだことはあるだろうか。世界的なベストセラーになった本だから知っている人もいるだろう。僕もたびたび著書でその言葉を引用している。

同書は、人類の文明を俯瞰して歴史的事実から検証した、壮大な物語だ。とりわけ僕は、「人間は穀物に家畜化された」といった表現に注目した。そして、そこから非常に納得がいく論考が展開されている。

旧石器時代、人類は狩猟採集民族であり、人々は狩りの毎日を送っていた。だが、農耕の技術を得たことで状況は変わった。作物が育つ畑を守るため、狩りのための移動をやめて、畑を管理し続けなくてはいけなくなった。

やがて人間はより大きな集団で生活するようになり、決まった土地で生きていくことを強いられた。生きるためには仕方のないことだった。

結果として、暮らしていく場所や役目を選ぶことの「自由」を失った。狩猟採集民族だった頃の刺激的で多様な日々も失ってしまったことだろう。ハラリはその人類の様変わりを、「穀物に家畜化された」と説いている。

だが、産業革命以降、機械による穀物生産の自動化が進み、集団で働かなくても、食べ物が人間の元に届く仕組みができあがった。

狩猟採集の文化を捨てて、農耕に縛られていた頃の不自由さに、人間はもう我慢しなくてよくなったはずだ。

だが、それにもかかわらず、「仕事に文句を言いながらでも、気が進まない集団に属してでも、懸命に働くべき」という理不尽な常識が社会に残っている。これはなぜなのだろう?

額に汗して働かなくても、食べていける―。これは本当のことなのに、農耕で培われた人間の固定観念がそれを認めようとしない。勤勉に働かなければ食べていけない、と人々が無批判に考えてしまうのは、変わることを拒否する人間の本能がつくり出した〝常識〞のせいだ。

「食べていくため、安い賃金でも雇ってもらって我慢しなければ」
こうした誤った常識がなくならないから、労働単価は上がらないし、仕事の量も減らない。そして困窮が増していく。

賃金が安い仕事に満足できなければ、辞めていいのだ。そうした人間が増えれば、雇う側は賃金を上げて募集せざるを得なくなる。仕事を辞めている間は、スマホを使って、メルカリやAirbnbなどのC to Cのビジネスでお金を稼いでいれば、当面は困らない。

食べるためには、集団の中で個性を殺して働かなくてはいけない……。そんな旧時代の固定観念は、軽々と捨ててしまおう。スマホはそうしたあなたの生活を的確にサポートしてくれるはずだ。

大きな話から入ってしまったが、これが人類の真実なのである。僕たちの世界はもう、働かなくていいというフェーズに移行した。いや、狩猟採集時代に持っていた権利を取り戻したと言うべきか。

僕の本の読者には、「働かなくても生活できる」という人生を、夢の話だとは思ってほしくない。

スマホを持つこと=有能な部下を複数持つこと

人工知能の発達により、人間がやらなければならなかった仕事はどんどん減っている。スマホを使っているだけで、あなたも実感できるはずだ。

飛行機のチケットをカウンターの担当者に予約する、翻訳者を雇う、計算、設計、議事録のまとめ……。少し前までは人手に頼っていた作業の大部分が、もう、スマホを使うことで代行されている。

ひと昔前の感覚で測るなら、スマホを1台持っていれば、数十人の有能な部下を持っていることと同じなのだ。

ベーシックインカムも、それほど遠くない未来に実現することだろう。すでに欧米の国々で試験的に実施され、真剣に検討されている。

働かず、好きなことだけして生きていける社会に、いま、世界規模で移行していることを強く自覚してほしい。

すると、スマホで実現すべき本質的な行為とは何か、自然にわかってくるはずだ。低賃金で我慢しながら気の進まない集団に入って毎日を過ごすのではなく、好きなことに集中して、自分だけの価値を生む行為にシフトする、ということだ。

誤解してほしくないが、スマホを持っているだけで食べていくことはできない。スマホを持って、どう行動する? 何を狩りに行く? その考え方が求められる。

食べるための労働はテクノロジーに任せて、僕たちは何にも縛られることのなかった、かつての狩猟採集時代の興奮を取り戻していこうではないか。

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