カネミ油症「総合的認定」を

 カネミ油症被害者団体と国とカネミ倉庫による年2回の3者協議。厚生労働省は6月の協議を新型コロナウイルス感染防止のため中止すると明らかにした▲なぜ延期ではないのか、被害者から意見や質問を文書で出してもらって答えることもしないのか。疑問が湧き、同省の担当課に電話した▲被害者団体や同社の意向を聞いて中止を決めたという。「大切な会議という認識です」とも。それにしては毎回の協議で国側に被害者救済への積極性は全くみられないが-と喉元まで出かかったが抑えた▲油症発覚から半世紀が過ぎたが、2世(被害者の子ども)らを含む未認定問題は解決の道筋さえ描けず推移。医師らが基準を作った従来の「医学的認定」制度がそのまま当てはめられ、壁となっている▲先月発行の季刊誌「環境と公害」で、高崎経済大准教授の宇田和子さんは「総合的認定」の必要性を指摘した。油症は医学的に解明されていないのに、認定の責任は医師でつくる油症治療研究班に実質負わされている。認定作業の責任を行政に返上し、疫学者や弁護士、保健師ら他領域のプロを含む審査組織を置くよう促している▲国は3者協議を「大切な会議」とするなら、こういった専門家の提案も協議で取り上げてほしい。能動的姿勢をたまには見せてもらいたい。(貴)

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