【新型コロナ】ドイツ在住アーティストに3つの質問

ドイツの芸術・文化支援の実際は? 今、考えていることは?

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新型コロナウイルスが芸術・文化に深刻な影響を与える今、ドイツに住む芸術・文化のつくり手たちはどんなことを考え、実践しているだろうか。日独のアーティストの方々に、ドイツの芸術・文化支援策の実情や、現在の取り組みなどについて伺った。

Aさん(ベルリン在住/日本人)の場合

プロフィール:
在独4年目。画家やグラフィックデザイナー、日本の伝統をベースとした手仕事の作家として活動している。

─ 新型コロナによって、生活が変わりましたか?

4月と8月に予定していた展覧会がそれぞれ延期となりました。展覧会の延期や制作依頼が減ったことで、作品発表の機会や収入が減ることへの心配があります。

また、自分が感染してウイルスを拡散してはいないか、重症者や死者が日々増加することへのやりきれなさや、多くの不自由がもたらす混乱など、不安は多岐に渡ります。一方、今は時間に余裕があるので、友人たちとオンラインで意見交換をすることも。

─ ドイツ連邦政府や州政府から 支援を受けましたか?

ベルリン州政府による「即時支援金Ⅱ」*を受けました。ウェブサイトにアクセスするまで24時間ほど待ち、必要事項の入力などに5分程度。手続きはとても簡単で、ベルリンという芸術・文化が豊かな街に住んでいることの恩恵を受けていると感じます。

その反面、受け取った助成金の用途や、後になって申告や返金を求められる可能性があるかなど、不明点が多いので情報収集に頭を悩ませることも。ドイツ政府やベルリン州には、現状で効果をあげている支援の継続と、今回の支援から漏れてしまった人たちへの救済措置を望んでいます。

*「即時支援金Ⅱ」……ベルリン州政府は3月27日から、連邦政府からの資金提供を待つのではなく、州政府が立て替える形で前倒しで緊急支援を開始。申請受理から支援金の振込まで、2〜3日という驚異的なスピードが話題に(現在は資金切れのため休止中)。また使途は活動上の経費に限定されておらず、生活費への充当も可能だという。

─ 新型コロナは、ご自身の活動や社会にどのような影響を及ぼすと思いますか?

世界の歴史を紐解けば、疫病、災害、恐慌、戦争など社会構造の転換点となる事象は数多くあり、今回も大きな影響は避けられないでしょう。特に資本主義経済への打撃を想像すると背筋が凍る思いです。

しかし感染を防ぐための措置が結果的に二酸化炭素排出量の大幅削減に貢献するなど、皮肉めいた好影響があるのも事実。今は可能な範囲で作品制作を続けつつ、世界が、国々が、人々がどのような反応を示して動いているかについて、注視している最中です。

ノイマンさん(デュッセルドルフ在住/ドイツ人)の場合

プロフィール:
旧東ドイツ地域出身の現代美術アーティスト。デュッセルドルフ芸術アカデミーで写真を学び、現在も精力的に活動。

─ 新型コロナによって、生活が変わりましたか?

3月にデュッセルドルフで予定していた大規模な個展と、二つのグループ展が閉鎖に。特に個展には多くのエネルギーとお金を投資していたので、観客のいない展示空間はシュールに感じました。

その後、この会場で「孤独な作品のためのコンサート」と題して、ミュージシャンや詩人のパフォーマンスをライブ配信しました。

しかし考えてみれば、私たち旧東ドイツ地域の出身者にとって、それまで当たり前だと思っていた世界が崩壊することは新しい経験ではありません。ベルリンの壁が崩壊した1989年と同様、今の状況から多くを学べると思います。

─ ドイツ連邦政府や州政府から 支援を受けましたか?

連邦政府によるフリーランスのための緊急支援と、ノルトライン=ヴェストファーレン(NRW)州独自のアーティストへの支援を申請しました。

このような支援はありがたいですが、「緊急支援」はその名前の通り、あくまで一時的なもの。アーティストやフリーランスが再び活動し、経済を回していけるような仕組みを整えていくことが急務だと思います。

─ 新型コロナは、ご自身の活動や社会にどのような影響を及ぼすと思いますか?

コロナ危機によって、世界がいかに壊れやすく、そしてつながっているかということを改めて認識しています。

3月の終わり頃、私の娘はリンゴの種を土に埋め、それがリンゴの木になるかどうかの観察を始めました。種から木が育つというのは考えてみれば自然の成り行きですが、新型コロナが蔓延する現在、この小さくて壊れやすい植物の姿にとても感動しました。私の目には、まさに生と死のシンボルに見えたのです。

今はこのリンゴの木に寄り添い、写真を撮っていきたいと思っています。

寺嶋さん(ミュンヘン在住/日本人)の場合

プロフィール:
在独8年目。コンテンポラリー・ジュエリーの中心地であるミュンヘンで、装身具作家として活動している。

─ 新型コロナによって、生活が変わりましたか?

すぐに影響があったのは3月9日からのミュンヘンでのグループ展示でした。まだコロナの影響がそれほど大きくなかったため開催こそしましたが、残念ながら来場者は前年の3割程度。

ほかにも5月までのイベントが全てキャンセル、もしくは延期されました。現在も自宅のアトリエで制作を続けていますが、「発表場所が無い=収入が無い」ことに変わりはありません。

また最近は改善されましたが、材料や道具の注文や発送が以前のようにスムーズにいかないことも。

─ ドイツ連邦政府や州政府から 支援を受けましたか?

バイエルン州を通して、連邦政府の緊急支援に申請をしました。まず3月後半に郵送で申請しましたが、順番待ちのままで結局振り込まれず。

その後、4月上旬に新しい情報を受け、今度はオンライン手続きをしました。しばらくして受理の手紙が届き、実際に入金されたのはその2週間後。

私の周りのアーティストには、まだ返事をもらえていない、または説明不十分で受理されなかったという人も多く、若いアーティストが個人で申請するにはハードルが高いと感じます。

─ 新型コロナは、ご自身の活動や社会にどのような影響を及ぼすと思いますか?

コロナによって世の中がガラリと変わってしまったので、制作活動においても今後の社会全体を想像することが重要だと思っています。

人とのコミュニケーション方法の変化や、外出自粛時での創作活動の意義などについて、作品に反映できないかと試行錯誤中です。

最近ではオンラインで作品を見せる美術館やギャラリーも増えていますが、「ジュエリー」は人が身に着けることに大きな意味があります。そのため、より自己と他者の結びつきを意識した活動を展開していければ。