超ハイスペック王子でも玉砕する、「親との同居」条件つき婚活の難易度

講演会の際に、東北地方のあるエリアの地域結婚相談センターの方からこんな悩みを打ち明けられました。

「男性会員から女性会員へのお見合いの申し込みによって、ある程度のお見合いは成立してはいる。ただ、男性側からの「結婚したら自分の実家で同居してほしい」という希望がカップリング成立の壁となっている。男性の実家から女性の勤務先への通勤が不可能なケースでの発言が多く、『最初から私が仕事を辞める前提での交際は、やはり考えられない』『私の今の仕事のこともプロフィールに書いてあったはずなのにどういうつもりなのか』という苦情に近い相談さえもでている」

親との同居については、経済的なメリット、そして、夫婦2人のどちらか一方とその親だけはこれまで生きてきた環境を死守できる、という環境メリット(一方、パ―トナー側はこのメリットを捨てることになる)の2つのメリットがあるということができます。

親と同居してほしい、という提案は、提案者側にそもそも何らかのメリットがなければ提案されることがないため、どちらかには捨てがたいメリットということなのでしょう。

しかし、その提案はパートナーにとっても同様に相応のメリットがあるものでなければ受理されることはまずありません。一方的なメリットしかないのであれば、同居条件付き結婚自体が破棄されることとなります。

では一体、どれくらいのカップルが親との同居付き結婚生活を送っているのでしょうか。

今回は、同居条件付きの婚活そのものの是非を語るのではなく、統計的に見た場合の「同居条件付き婚活の難易度」を皆さんとみてみたいと思います。


「親4人のうちの誰か」と同居している妻は19.8%

まずは、国の研究所が5年に1度実施している調査対象選定の信頼度の高い「全国家庭動向調査」の第6回調査(2018年実施)のデータを見てみたいと思います。1106の国勢調査区の中から無作為抽出した300の調査区に住んでいる結婚経験のある女性が調査対象となっています。このうち有配偶女性の有効回答数は6,142となっています。

さて、この6,142名の女性のうち、カップルの両親である「4人の親のうち誰かと同居」していると回答した女性は19.8%となっています。

5組に1組、といった割合ですので、5組に4組の夫婦は親の誰とも同居していない、という結果です。

「そもそも親が4人ともなくなっていたら同居しようがないじゃないか」
という声も聞こえてきそうですが、そのようなケースを除いた有配偶女性を抽出した結果となっています。

このような統計的な情報から考えるならば「相手が自分の親と同居してくれて当然である」という考え方で令和時代の婚活を乗り切ることは、前途多難といえそうです。

相手がその他の条件をすべて無視してお見合いしていたとしても、少なくとも5回のお見合いのうち4回以上は、この提案によってだけでも玉砕してしまう可能性があるかもしれません。

また、親と同居していると回答した19.8%の女性のうち、すべての女性が最初から同居OKだったわけではなく、夫婦のどちらかが病に倒れたなど、やむを得ない状況で同居に至っているケースも考えられます。

そう考えると親との同居条件はかなりハードルの高い条件であるといえます。本人だけならまだしも、その親までもこの条件に固執する場合は、困難な婚活を覚悟する必要がありそうです。

トレンドとしても親との同居婚は大きく低下

次に同じデータを2008年第4回調査、2013年第5回調査の結果とも比べてみたいと思います。

10年前の2008年は9月にちょうどリーマンショックのあった年ですが、調査は7月に実施されていますので、その影響はありません。経済環境的に見て、ほぼ平常モードの調査結果といえます。10年前では今よりも7ポイント多く、4組に1組以上は親との同居生活をしていた、という結果です。割合的に多くはありませんが、5組に1組未満となった今よりは多かったといえます。

5年前の2013年には、親との同居婚が3割を超えて3組に1組に近づいていました。しかし、この結果をみて、親との同居は調査年によって増えたり減ったりのようだ、とみるのは妥当なデータの見方とはいえません。

2013年のこの結果については、2011年3月の東日本大震災の影響を考える必要があるといえます。筆者は人口動態の研究者でもありますが、大震災後、原発問題で福島県から大量の県外への転居(特に女性)が発生し、2019年になるまで全国トップレベルで人口流出が減少してこないといった状況でした。

また、復興庁によると2019年でもこの災害の避難者が全国に存在しているということで、まさしく日本の観測歴史上最大規模の災害だったのです。つまり、2013年については親との同居について統計上の異常値が少なからず含まれている、とみたほうがいいように思います。

女性がときめく超ハイスペック王子でも同居婚オファーは玉砕

婚活に関心が高い読者の皆さんは、1人の独身貴族男性を沢山の女性が射止めようと奮闘する、という、あるネット番組をよくご存じかもしれません。

シリーズで最も高視聴率だった最新シリーズの「王子」は、誰もがうらやむお金持ちの実家に暮らしています。そしてその実家のある街をこよなく愛し、実家とは言わないまでも、そこで新婚生活を送ることを途中までは姫のマスト条件に掲げていました。

結局、視聴者に大炎上されるほどに彼が執心した女性に「どうして〇〇がいいのかな」と反旗を翻され、今ではどこでもいい、という考えにすっかり変わってしまっています。

今後この2人がどうなるかはわかりませんが、番組終了後破局続きのシリーズにおいて、唯一、結婚に向けて順調に家族ぐるみの付き合いが続いているということです。王子スペックの彼でさえも同居婚オファーの壁は厚かった、という結果に終わりました。

統計データでも親との同居婚は少数派であることを示しましたが、いずれにしても、ある幸せのカタチ(プロセス)にしがみつくことで、くれぐれも本当の運命の人を失うことのないようにしたいものです。

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