「都市から地方へ」流れつかめ 移住誘致に自治体連携 「コロナ後」見据える五島市 

福岡県の自治体とビデオ会議でつながり、オンライン移住相談に関する勉強会に臨む五島市地域協働課の職員=同市役所

 「コロナ後」をどう暮らすのか。新型コロナウイルス禍を受け、「都市から地方へ」と移住の流れが強まるとの見方がある。東京などで外出自粛や休業要請が長引き、人口が密集する都市生活のリスクが顕在化したことに加え、仕事のオンライン化が進み居住地を選ばない業種が増えたためだ。人口減に悩む自治体は「コロナ後」を好機と捉え、移住者の受け入れ準備を進めている。
 新型コロナの影響で人の移動が制限される中、移住相談の現場はオンライン上に移りつつある。
 昨年、200人超の移住者を受け入れた五島市。現在、対面や来島を伴う相談業務を中止している。代わりに3月以降、ビデオ会議を使ったオンライン相談会を3回開き、東京などの計19組31人の相談に応じた。
 今月14日には、オンライン相談に関する自治体向け勉強会をウェブ上で主催した。福岡県大刀洗町や熊本県菊池市など県外5市町が参加した。新型コロナ収束後に「都市から地方へ」の流れが加速すると見込み、九州の自治体同士で連携を強め、オンライン相談の手法などを共有する目的だ。
 五島市地域協働課によると、従来の相談会は職員が東京などの会場に出向き、移住希望者と会う形が主流だった。オンライン相談なら自治体側は出張経費などを削減でき、希望者も自宅で気軽に相談できるなど双方にメリットがある。
 今回の勉強会では、参加した九州の数自治体が合同で、9月にオンライン相談会を開く方針が固まった。自治体単独で移住者を募るより、複数の自治体が集うことで移住希望者の選択肢を広げる狙い。例えば「九州で子育てしやすい自治体」を共通テーマに希望者を募り、細かい移住目的やニーズに応じて各自治体に振り分けていくイメージだ。
 同課の平野梓係長は「今後の移住者誘致は(どちらかが勝つか負けるかの)ゼロサムではない。移住を少しでも考えている人が参加しやすいよう、自治体が連携して『入り口』を広げることが重要」と強調する。
 地方移住を支援するNPO法人ふるさと回帰支援センター(東京)の嵩和雄副事務局長は「今後、都市の『密』への不安などから地方への移住希望者が一定は増える。オンライン相談の普及で、離島や過疎地の小さな自治体も希望者に直接働き掛けることができ、チャンスが広がる」と分析する。一方で地方経済の悪化や人の移動が制限される状況は懸念材料。「緊急事態宣言の解除後しばらくたたないと、どうなるかは未知数。(人口の地方分散が進むには)新型コロナを契機として企業がリスク分散のため地方へ拠点を移し、地方にも就労の場が増えるかどうか」が鍵だと指摘する。

 


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