目と心に潤いを

 ごく短い時間を「瞬く間」と言う。人は1分間に15~20回ほど瞬く、つまり、まばたきをするらしい。視界が暗くなるのを意識しないくらい、確かにまばたきの時間は短い▲少年少女の頃からそのスポーツに憧れ、何年も熱中してきた選手にとって、“本番”に当たる大会は「瞬く間」なのだろう。きつい練習を積み重ね、その短い時に懸けてきたに違いない▲このところ、全国高校総合体育大会(インターハイ)、県高総体、夏の全国高校野球選手権の中止が相次いで発表された。コロナ禍によって若い人たちが集大成の場や、全てを懸ける時を失うのはやるせない▲割り切れずにいる君たちに、せめてもの区切りになればと願う。「夏の甲子園」長崎大会の代わりとなる大会が、7月に開かれることになった。県高総体でも、代替の大会、地区別の大会、3年生だけの大会を開く動きがあるという▲会場の確保といった難問もあり、全てで「代替」がかなうとは限らない。代わりがあってもなくても、今までの努力を心の糧に、と気持ちを切り替えるには、まだ時を要するだろう▲まばたきには、そのたびにわずかな涙を出して目を潤す働きもあるという。選手それぞれ「やってきてよかった」と目を潤し、心を潤す日が来るように。大人が知恵を絞り、心を配りたい。(徹)

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