自動運転社会でも自動車保険は必要? 自動車保険の将来とは【未来モビリティ総研】

衝突事故でエアバッグが展開した例

クルマは“所有”から“使う”時代へ

タイムズカーシェア

自動車業界が「100年に一度の大きな変革期」にあると、近年良く言われるものだ。人口減少や少子高齢化、そして人々の価値観の変化に伴い、人々の自動車に対するニーズは当然変化している。

自動車はこれまで「所有」することを基本としていたが、「使う」ことをメインとするニーズが着実に高まってきているのだ。

さらに言えば、今後、自動運転が現実のものとなった場合、運転そのものに対する認識も大きく変わってくるのは自明の理。そうした中で自動車保険もまた大きな変革を求められるようになっている。

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自動車の大変革期の今、保険も大きく変わる!

この日、オンラインで開催された「Mobility Transfomation 2020」<主催:(株)スマートドライブ>では、そうした時代に取り組む損保ジャパンの例が紹介された。テーマは「MaaS時代における保険の新たな価値について」

人々の価値観の変化に伴い、自動車産業マーケットが大きな変革期を迎えるなか、自動車保険はこのままでいいのだろうか? 前例に捉われずにチャレンジし、「移動」の進化に合わせて「保険」を進化させ、あらゆる人々に新たな体験価値を提供していくべき。そう話すのは、損害保険ジャパン(株)リテール商品業務部 Next Retail Project 課長代理の安藤聡昭氏だ。

損保ジャパンは業界初のサービスを積極的に開発

そこで安藤氏が語ったのは、「自動車保険は今、“少子高齢化の進展”“デジタル技術の急激な進化”“自然災害の増加”の3つに取り囲まれた状況下にあり、求められるスタイルは大きく変化。発生した被害に応じるだけの従来型の保険会社ではダメで、ユーザーの安心・安全を先取りしてスピーディに対応していくことこそ、これからの保険会社が生き残れる術と考えている」ということだ。そのために損保ジャパンは業界に先駆けた数々のサービスを提供してきたという。

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その一つが2015年3月に同社が業界に先駆けてスタートさせたのが専用ドライブレコーダーで安全運転を支援するテレマティクスサービス「スマイリングロード」だ。

法人向けではあるが、導入した結果として事故件数が約20%減少。さらにスマホと連動させて得られた運転診断結果によっては最大20%の保険料が得られるサービスも始めた。

同社は売上全体の60%が自動車保険事業が占めるが、国内有数の介護ヘルスケア事業を展開するという側面も持つ。いち早くこうしたプランが導入できたのも、ここで培った安心・安全に対する意識が社内全体に行き届いていたからと安藤氏は見る。

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LINEを活用したサービスは気軽さが人気の秘訣

また、同社は「LINE」を使った保険金請求や、いつでも簡単に必要な分だけ入れる「LINEほけん」もスタートさせている。

これはシェアリングの普及や潜在的なマイカー需要への意識に対応したもので、同時にデジタル技術の急激な進化によって生み出されたものでもある。損保ジャパンが行ったユーザーヒアリングでは、合理的な移動手段を選択するつもりで手放したものの、大半のユーザーは「マイカーを持てるなら持ちたい」という意識を根強く抱えているとの結果が出た。この保険はまさにそうしたユーザーに対してきめ細かく対応した結果、生み出されたとも言える。

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JALと住友商事が出資した CES2020

自動車の革命は保険にも影響大! サービスの根本が大変革する

シトロエン Ami(アミ)
ジョビー・アビエーション CES2020

そして、保険会社にとって避けて通れないのが、技術革新『CASE』であり、移動革命「MaaS」だ。

この2つの大変革がモビリティに影響を与えるのは間違いなく、保険会社がこれにスピーディに応じることは欠かせない。たとえば、クルマが「所有」することから「使用」することに需要が移りつつあることは紛れもない事実であって、その中には個人間シェアリングも当然含まれる。

それに加え、完全自動運転が実現した際には、保険会社としてもさらに柔軟な対応が求められてくるだろう。

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当面は自動運転社会でも保険は必須!

※写真はイメージです

よくCASE絡みで自動車保険の話をすると、「自動運転車が普及すれば、事故はなくなるから保険すら不要になる」と言われるが、確かに全部の車両が自動運転化されれば事故は大幅に減るだろう。保険の必要性は減るかも知れない。

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しかし、現状を見る限りそれは遠い未来の話とも言える。自動車専用道路での自動運転車の実現は早い段階で登場するかも知れないが、それにしても少なくとも5年以上はかかるだろう。一般道についてはさらに先のことになり、個人的には今もなお時期を見通せる状況にはないと思っている。

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自動運転カーの修理代は超高額! 将来的にも保険は必要

京急踏切衝突事故

とはいえ、その準備をしておくことは大切だ。完全自動運転車と部分的な自動運転車、さらには一般車が共存する世界もしばらく続くこともあるわけで、となれば完全自動運転車に乗っていたとしても何らかのトラブルに巻き込まれる可能性は十分ある。

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さらに言えば、完全自動運転車はある意味ロボットのような先進技術満載の車両となるわけで、それが事故に遭えば修理代もかさみ、そのリスクを鑑みれば保険料の引き上げも必要になってくるかもしれない。

いずれにしても、完全自動運転車に乗っていても、万一に備えて何らかの保険でカバーする必要はなくならないのだ。その意味でも損保ジャパンのように柔軟な考えの下で自動車保険を開発すべき時代に入ったと言ってもいいだろう。

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【筆者:会田 肇/写真:MOTA編集部・スマートドライブ】

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