マスク「一律価格」で本当に買えるのか 着用“義務化”のイタリアで探索してみた

新型コロナウイルスの影響により、マスク需要が世界中で急増しています。もともとマスク習慣のないイタリアでも、新型コロナウイルスの流行以降はすっかり当たり前の習慣になりました。

コンテ首相は4月26日の会見で外出時のマスク着用を義務化することを発表。またそれに合わせて、マスクの価格を1枚50セント(約60円)にすると述べました。日本でも政府が配布するマスクが大きな話題になっていますが、イタリアではどのような状況なのでしょうか。


規制緩和に合わせてマスク着用を義務化

イタリアでは5月18日以降、新型コロナウイルス対策の規制が大幅に緩和されました。これまで外出は仕事や買い物などに限られていましたが、州内であれば自由に移動が可能になり、ショップやレストラン、美容室、美術館なども営業できるようになりました。劇場や映画館など一部の施設の再開はまだ先ですが、かなりの制限が解除されたことで多くの人が街に出て、久しぶりの散歩や外食を楽しんでいます。

ただ、いずれの場合も1メートルのソーシャルディスタンスを守ることやマスク着用が義務付けられています。外に出る機会が増えることで、マスクの需要もこれまで以上に増えそうです。

イタリアでマスクが購入できるのは薬局のほか、一部のスーパーや家庭用品店、またアマゾンなどのネット通販など。こう書くと日本と同じと感じるかもしれませんが、もともとマスク着用の習慣がないイタリアでは、コロナ以前は薬局くらいしか売っているお店はありませんでした。ここ1~2ヶ月で、ずいぶん販売店舗が増えた印象です。

とはいえ、マスクは流行当初からかなりの品薄で、少なくともミラノでは、薬局でも他の場所でも、店頭に並んでいるのを見かけることはほぼありません。アマゾンにはいくつか購入可能な商品も並んでいますが、ざっと見たところお届け予定日は1ヵ月以上先のものばかり。ここでもかなりの品薄であることがうかがえます。

(出典:amazon.it)

1枚50セントのマスク出回るも…

筆者の自宅の周りには2件の薬局がありますが、1件は「マスク、消毒液、手袋売り切れ」の貼り紙が常に貼られている状態です。少なくとも2週間以上前からこのままで、今後もあまり期待できなさそうです。

もう1軒のほうに行ってみると、2枚で15ユーロ(約1,800円)の「KN95マスク」ならあるとのことでした。レジ裏にどかっと置かれた大箱から直接取り出しているところを見ると、到着したばかりといった雰囲気です。

KN95マスクとはいえ2枚で15ユーロはかなり高価ですが、生地がしっかりしているので、アルコールなどで消毒し再利用したらいいと教えてくれました。翌日には箱がほぼ空になっていたところを見ると、この値段でもかなり売れているようです。

「コンテ首相の50セントのマスクはないの?」と聞いてみると、翌日には12枚6ユーロ(約720円)のマスクが入荷するとのこと。1枚あたりに換算すると、確かにコンテ首相がアナウンスした通りの価格になります。

ただこれも入荷次第すぐに売り切れるので、確実に手に入るかどうかは分からないとのこと。市場に出回ってはいるようですが、実際に手に入れるのはかなり難しそうです。

マスクだけでなく手袋も品薄に

新型コロナウイルスの流行により、手袋も品薄になっています。イタリアではスーパーに入る時、またバス・メトロなどの公共交通機関を利用するときに着用が義務付けられており、マスクと手袋は同じくらい重視されている印象です。新型コロナ対策として、手洗いが推奨されていることを考えると、理にかなった対策と言えるかもしれません。

レストランによってはマスクと手袋を着用しないと入店できないというルールを設けているところもあります。入口にはマスクのイラストとともに「マスクと手袋を着用している人のみ入店可」の貼り紙が。

新型コロナウイルスが流行する前は、イタリアでマスクをしているのはアジア系の旅行者くらいでした。そのため、マスクはかなり奇異な目で見られていたこともありましたが、ここ数ヵ月でその常識はすっかり変わったことを実感しています。

リモートワークやテイクアウトの増加など、新型コロナウイルスの流行により私たちの生活にはさまざまな新しい習慣がもたらされましたが、イタリアではそのひとつとして、マスクの着用が加わることになりそうです。

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