緊急事態宣言後、ダウンロード数が急増したアプリ1位は?

コロナ禍で変わった市場の一つにあげられるアプリ市場。新型コロナウイルスの感染拡大によって人々のライフスタイルが大きく変化したことで、さまざまなアプリが急成長しています。この記事では、実際にどのようなアプリが影響を受けているのかをモバイル市場データプラットフォーム「アップアニー」のデータから解説します。


4月にダウンロード数が「ブレイク」したアプリ上位20

上記の表は、3月と比較してダウンロード数の増加率が高かったアプリの上位20 のランキングです。

4月7日に発令された緊急事態宣言を受け、多くの企業におけるテレワークに拍車がかかったことから、ウェブ会議アプリ「ZOOM Cloud Meetings」が1位にランクイン。Zoom の他にも、ビデオ会議アプリやビジネスチャットアプリなど、仕事に関連するアプリが多数ランクインしています。こうしたアプリの台頭が、ビジネスカテゴリのアプリのダウンロード数を押し上げています。

また、オンライン授業を行う教育期間が増えたことから、たとえば、6位にランクインしている「Google Classroom」など、教育系アプリのダウンロード数も急速に伸びています。テンセントが新しくリリースしたゲームアプリ「コード:ドラゴンブラッド」がゲームアプリの中では首位となりました。ゲームアプリは比較的直感的にプレイできるハイパーカジュアルゲームアプリが複数ランクインしています。

カラオケアプリのダウンロードが増えた理由

ビジネスアプリやゲームアプリ以外にも、4月にダウンロードを伸ばしたアプリが複数あります。JX通信社のニュースアプリ「News Digest」が2位にランクインしています。また、7位にランクインした、カラオケアプリ「Pokekara」の急成長には、カラオケボックスの営業自粛による「巣ごもり需要」が増加したことが背景だと考えられます。

妊娠や子育てに関する相談ができる機能を持つ「イオン子育て応援アプリ」が17位にランクインしており、コミュニケーションが相対的に少なくなる中での情報収集や相談にアプリが活用されているようです。

4月はビジネスアプリが急成長

緊急事態宣言後、多くの企業がテレワークへ移行する中で、ビジネスアプリのダウンロード数、利用時間ともに急増しました。ビジネスアプリに代表されるようなビデオ会議ツールやチャットツールはPC で使えるものがほとんどですが、スマートフォンやタブレットにアプリをインストールするユーザーが多いようです。

日本、米国などにおいてはZoom やMicrosoft Teams、Hangouts Meet といったビデオ会議ツールが台頭しているものの、中国では違った傾向が見られます。中国においては、アリババが提供する「Ding Talk」、テンセントが提供する「VooV Meeting」といった中国発のビデオ会議の利用が目立ちます。

・進む教育のデジタル化

教育機関では授業のオンライン化を進められ、ビデオ会議アプリを使ってオンラインで授業を実施する学校も少なくありません。

3月時点では、急激な成長は見られなかったものの、始業した4月から教育系アプリのダウンロード数、利用時間ともに急増しています。ビジネスと同じように、全体として教育のデジタル化も徐々に進みつつある傾向が見られます。

激化する動画ストリーミング市場

アプリカテゴリ全体は1月から比較しても右肩上がりで成長しています。エンターテイメントアプリのダウンロード数は、アプリ全体のダウンロード数と比例して増加。昨年の同時期と比較すると約28%増加の5,640万ダウンロードを記録(2019年3月対比)するなど、おうち時間の増加により動画ストリーミング市場が盛り上がっています。

動画ストリーミングサービスは、「Amazon Prime Video」、「Netflix」、「Hulu」、「TVer」、「Paravi」、「Abema TV」と海外勢と日本勢が複数存在する競争市場ですが、今後、Disney の展開するストリーミングサービス「Disney+」が日本に上陸することが決定しており、さらに競争環境が激化することが予想されます。(Disney+ の欧米での動向についてはこちらのブログ)。

前年の同時期と比較してダウンロード数が急上昇した動画ストリーミングアプリのランキングをみると、おうち時間が増える中、無料コンテンツを開放したアプリのランクインが目立ちます。

ブレイクランキングで1位となった「Paravi」は、無観客試合での実施となったプロ野球の公式戦を無料配信したことや、ドラマや映画などのコンテンツを楽しむユーザーが増加したことが好調の要因と考えられます。

また、3位にランクインした「NHKプラス」は新型コロナウイルス関連の情報を集める際に使用するユーザーが増えたことが要因の可能性あります。

・フードデリバリー、レシピアプリで利用が急増したアプリは?

外出自粛の影響で、スマホアプリで食事のオーダーをしたり、レシピを探したりする人が増え、「フード&ドリンク」カテゴリのアプリの利用時間が急増しています。米国、日本、韓国、イタリアの各国で急成長を見せ、日本においては1月平均と比較して4月は10%利用時間が伸びています。

日本においては、ダウンロード数は2月に急増した後に落ちついたものの、4月には再度成長を見せています。緊急事態宣言で外出に制限がかかったことが4月の成長の要因と言えるでしょう。

3月と4月に最もダウンロードされたフード&ドリンクカテゴリのランキング上位10です。スシローやすかいらーくのアプリがランクインしていることから、3月時点では、まだ店舗での利用やテイクアウトをしていた層が多かったと推測されます。

4月は、首位 Uber Eats は変わらず、クラシル、DELISH KITCHENなどのレシピアプリがランクイン。また、Uber Eats 以外にも出前館、Mc Deliveryといったフードデリバリーアプリがランキングの上位に入り、自宅にいる時間が増え続けている様子がうかがえます。

世界的に大きな影響をもたらしたパンデミックは、日本国内においては徐々に収まりつつありますが、これをきっかけに生活スタイルが変わり、コロナ以前の状態に完全に戻ることは難しいかもしれません。

いまや生活必需品であり可処分時間の大部分を共に過ごすスマートフォン。仕事、食事、睡眠、余暇とあらゆる生活の場面で、無意識のうちにアプリを使う時間が増えています。アプリにおける消費動向が、消費者の嗜好や生活実態そのものを語ることとなるでしょう。

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