「食」を通じて「あなたが生きたい社会」に投票しませんか?ブイクック代表・工藤柊さんインタビュー

こんにちは、NO YOUTH NO JAPANです!私たちは若い世代から参加型デモクラシーを根付かせるために、政治や社会について分かりやすく発信しています。

今回のテーマは「食と社会参加」です。近年若者を中心に、世界中で「食」を通じた気候変動に対するアプローチが広がっているのをご存じですか?

そこで今回は、気候変動に対する日本と世界の動きについてご紹介します。さらに、ヴィーガン料理レシピサイトを運営する株式会社ブイクック代表、工藤柊(くどう・しゅう)さんにお話を伺いました。

日本の気候変動に対する動き

2020年3月30日、日本政府は、パリ協定における温室効果ガス国別削減目標の引き上げを行わず、2030年度に26%減の目標を据え置きすると発表し、話題を呼びました。

国連の気候変動に関する政府間パネルが、温室効果ガスの排出を2030年まで45%削減し、50年前後に実質0にする必要がある、とする中でのこの決定に「対策強化の意思がみえない」という不安の声もあがりました。

そんな中、同年4月24日に地球温暖化対策の強化を世界中で訴える2019年からの活動「グローバル気候マーチ」が、SNSを通じた「デジタル気候マーチ」として開催されました。ツイッターやインスタグラムなどのSNSで、ハッシュタグ「#気候も危機」を付けた投稿が2時間で7000件を超え、若者を中心に地球環境への思いを発信する大きな動きとなりました。

環境問題に対する意識による「ヴィーガン」の増加

国内外を問わず環境問題への意識が高まる近年、欧米諸国を中心に「ヴィーガン」というライフスタイルを選ぶ人が増えているのをご存じでしょうか?

ヴィーガンとは、「ベジタリアン」から派生したイギリス発祥の言葉と言われていて、「動物の搾取や利用をできるだけしない」という考え方やライフスタイルのことです。つまり、ヴィーガンの人たちは、動物性の食品をはじめ、ファッションやコスメに関しても動物性素材を利用した商品の消費を避けて生活します。

環境問題とヴィーガン、と聞いてもピンと来ない方が多いかもしれません。実は、畜産業と環境問題には深いつながりがあるのです。

まず、家畜動物を育てるため、さらに、家畜動物に与えるための飼料を育てるために膨大な土地が必要になります。その土地の確保のために、大規模な森林が伐採されているのです。また、牛のげっぷやおならには温室効果ガスであるメタンガスが多く含まれていて、地球温暖化の大きな原因であると言われています。

実際にアメリカでは、ヴィーガンを実践する人の割合が2009年の1%から2017年には6%に増加したと言われています。そのほかに、イギリスではヴィーガン・ベジタリアン人口が5年間で3.6倍に増加、ドイツでは2008年ごろからヴィーガン対応の飲食店が増え、ベルリンでは400近い飲食店がヴィーガン・ベジタリアン対応メニューを導入しているのデータがあります。

ヴィーガンを実践する理由は、環境問題をはじめ、動物愛護、健康への配慮と人によって様々ですが、環境問題への関心の高まりが近年のヴィーガン実践者の増加を後押ししていると言われています。

日本でも近年ヴィーガンを実践する人が増加傾向にあるようですが、欧米諸国と比べると、認知度が低く、ハードルが高いのも事実です。そこで今回は、「誰もがヴィーガンを選択できる社会」を目指す株式会社ブイクック代表・工藤柊さんに「食と社会参加」についてお話を伺いました。

NO YOUTH NO JAPAN ・米田(以下、米田):工藤さん、本日はよろしくお願いします!

株式会社ブイクック・工藤さん(以下、工藤):よろしくお願いします!

米田:早速質問なのですが、工藤さんはなぜヴィーガンというライフスタイルを実践されるのですか?

工藤:僕がヴィーガンを続ける主な理由は、動物愛護環境問題です。

 ヴィーガンを始めたのは、高校3年生のときでした。ある日の下校途中、車に引かれてぺちゃんこになっていた猫を見たことがきっかけで、動物愛護の問題に関心を持ち、ヴィーガンというライフスタイルにたどり着きました。そして、「実践しないわけにいかない」と、その次の日の朝からヴィーガン生活を始めました。

今では、環境問題もヴィーガンを続ける大きな理由の一つです。畜産業と環境問題の関係について知り、自分の子どもや孫の世代に、少しでもマシな世界を残してあげたい、と思っています。もちろん、自分にとっても環境問題は他人事ではありませんしね。

「買い物も投票」という表現があるように、僕も含め「自分が課題だと思っていることの改善のために、自分はヴィーガンを選ぶ」という人がたくさんいるんですよ。 

ヴィーガンレシピ投稿サイト「ブイクック」

米田:株式会社ブイクック設立までの経緯を教えてください!

工藤:ヴィーガン料理のみを掲載するレシピ投稿サイトである「ブイクック」は、2018年に立ち上げたNPO法人日本ヴィーガンコミュニティの事業の一つとして始まりました。2020年4月にもっと事業を大きくしたい、という思いで、株式会社ブイクックを設立しました。

米田:ブイクックに込められた工藤さんの思いは何ですか?

工藤:「ヴィーガンを続けたい人がより楽しく、 簡単に続けられる手助けをしたい」という思いです。実際僕がそうだったように、「ヴィーガンを始めたいけど何が食べられるのかよくわからない」、「ヴィーガンを続けたいけど料理が単調になってしまう」という人ってたくさんいると思うんです。ブイクックはそんな人たちに、長年ヴィーガンを実践されている人たちのバラエティ豊かなレシピを届けることができます。

他にも、「周りにヴィーガンを実践する人がいなくて孤独感を感じていたけど、ブイクックの投稿を見ていたら自分は一人じゃないと思えて、今は楽しくヴィーガンを実践できています」という声も頂きました。レシピサイトであるというほかにもヴィーガンの人たちの出会いの場になったらすてきだなと思っています。実際、ブイクックにレシピを投稿してくださる人たちとはもうすっかり知り合いですし、一緒にブイクックを作っていく仲間だと思っています。

 

これからは、さらに多くの人に対して「もっと簡単にヴィーガンを始められる・続けられる」というきっかけを生み出していきたいと思っています。そのために今取り組んでいるのが『世界一簡単にできるヴィーガンレシピ本』の企画・出版です。

このレシピ本のこだわりは、①スーパーで手に入る食材でできるレシピであること②毎日作れる簡単な手順であること③栄養学などの役立ち情報の掲載、の3つです。

現在、その出版に向けてクラウドファンディングを実施中で、これまで400 人の方にご支援頂きました。5月末までに、まずは1000人にレシピ本を届けるために頑張っています。

ご興味を持たれた方やご協力いただける方は、こちらから、ご支援やSNSのシェアなどをお願いいたします。

「食」を通じて社会に参加する

米田:工藤さんがヴィーガンを続けられるのは、気候変動や動物愛護といった問題に対して、「自分の行動が社会を変える」という実感があるからなのでしょうか?

工藤:正直、自分一人の行動が社会を大きく変えるとは思っていません。それよりも「自分の行動で世界が悪くなっていったら嫌だ」という一見ネガティブな思いのほうが大きいと思います。

例えば、畜産と環境問題の関係について知ったとき、「これまで、自分は経済発展による環境問題の被害者だと思っていたけれど、加害者でもあったんだ」と、衝撃を受けました。そして、「自分がこれ以上加担するのは嫌だから、とにかく自分ができることをしよう」と思うようになりました。それに、「一人一人ができることをすることで、ちょっとマシな世界になる」と思える社会が、良い社会だなあと思っています。だから、「まずは自分がしなくては!」という思いが強いですね。

米田:なるほど!「自分の行動で世界が悪くなって行ったら嫌だ」「まずは自分にできることを」という考え方は、選挙で投票に行く、署名に参加する、などの政治参加と同じだと感じます。

工藤:そうですね。1人の行動の影響力は小さくても、多くの人に広がれば確実に社会にインパクトを与えられる、という点でも似ていると思います。

米田:確かにそうですね!工藤さんは、ヴィーガンや畜産業が抱える問題について全く知らない、という人に説明するとき、気を付けている点はありますか?政治参加にも同じことが言えますが、より多くの人をを巻き込むためには、伝え方がとても大事だと思うんです。

工藤:そうですね、特に環境問題と畜産業の関係については、まだまだ多くの人が知らないのではと感じています。

その中で僕が意識していることは、とにかくフラットに話すといういうことですね。その中でも、「相手を完全に否定することはしない」ということを強く心がけています。

例えば、「あなたが食べているハンバーガー1つできるまで、こんなに環境や動物に負担を与えていて…」と相手を責めるように話をするのではなく、「世界規模でいうと、畜産業の影響がこのくらい出ているらしいよ」という感じで、事実を伝えるときはひたすら事実のみを伝えることを意識しています。そのあと、「この状況を少しでも良くするには、こういう選択したら貢献できるよね」という風に話すようにしています。

特に僕たちの世代にとって、環境問題って全く他人事ではないと思うんです。地球温暖化によって、将来家族で花見にいけなくなってしまうかもしれない。海面上昇で夏に海水浴ができなくなるかもしれない。そんな未来はいやだな、と思います。だからこそ、より多くの人が自分にできることをできる範囲で実践できる社会にしたいと思っています。

米田:「誰もがヴィーガンを選択できる社会」に向かって、NPO法人や株式会社という立場から活動されている工藤さんですが、政治的な立場からアプローチができるとしたらどのようなことを提案しますか?

工藤:ヴィーガンを選択しやすい世の中に、という意味では、食品にヴィーガンマークをつけることを推奨することができそうですね。買い物も安心してしやすくなると思います。実際にインドでは、緑色のマークがついていたらベジタリアン対応、赤だと非対応など、マークをつけることを遵守するように求められているらしいですよ。

他にも、「この地域はヴィーガンフレンドリーな場所!」という場所を作るために、行政から飲食店などの事業者への支援をする、という取り組みもできそうです。そんな場所ができれば、観光地になったり、海外からのお客さんが来やすくなるのではと思います。

実は既に、横浜駅の近くの一部地域など、一丸となってヴィーガンを推進している場所があるんですよ。その動きをもっと大きく広めるための支援を行政からできそうだなと思います。例えば、レストランをヴィーガン対応にするためには、知識が必要だし、集客する必要がありますよね。それにかかるお金や、人材の派遣などの支援を行政からできたらいいなと思います。

米田:なるほど!これから、いろいろな立場からのアプローチが増えていったら素敵ですね。最後に工藤さんから、読者の方へ一言お願いします。

工藤:僕が大切にしているのは「まずはできることから」という考えです。無理をせず、できる範囲で、持続可能な社会へアプローチして行きましょう。

最後に

今回は、株式会社ブイクック代表・工藤柊さんにお話をお伺いしました。「より良い社会へのアプローチ」とは、日常生活の中からも実践できると感じていただけたのではないでしょうか?

NO YOUTH NO JAPANでは、これからも様々な入り口から政治と若者をつなげていく活動をしていきます。

連絡先

E-mail: noyouth.nojapan(a)gmail.com ((a)を@に)

Instagram: noyouth_nojapan

Twitter: noyouth_nojapan

 

【参考文献】

福井新聞 FUKUISHINBUN ONLINE https://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/1083512(参照2020-5-21)

東京新聞 TOKYO Web https://genpatsu.tokyo-np.co.jp/page/detail/1424(参照2020-5-21)

ヴィーガン情報サイト Power of Plant

https://tokyovegan.net/ever-increasing-vegan-population/(参照2020-5-21)

(文=米田由実)

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