小松左京作品に学ぶ(5月26日)

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 SF作家の故小松左京さんの小説「復活の日」が、再び注目を集めている。ウイルスの感染拡大による人類滅亡の危機をテーマに、一九六四(昭和三十九)年に発表された。福島市の書店にはカミュの「ペスト」と並んで平積みされる。

 「たかがインフルエンザ」と思われた新種のウイルスが、世界中にまん延していく様子が描かれている。特効薬がないまま映画スターやプロ野球選手、政府首脳、現場の医師が倒れる。新聞は戒厳令や休校、混雑回避の記事で埋まる。今の世界を予見したかのようだ。

 福島医大医学部教授の下村健寿さんは、高校時代に読んで研究者を志すきっかけになった。「絵空事でなく、科学的裏付けがある」と読み継がれる理由を説く。世界が一つになれば絶望的状況も克服できる-。作品に込められたメッセージに、今こそ耳を傾けるべきと訴える。

 小松さんには、巨大地震を警告した代表作「日本沈没」がある。作品に共通するのは、未曽有の困難に立ち向かう人類の姿だ。コロナとの闘いは長丁場になる。「この危機は必ず乗り越えられる。日本人を信じている」。東日本大震災後に残した巨匠の言葉は、今を生き抜く人々の胸に響く。