【国産派vs外車派】ホンダ N-BOXとフィアット パンダをくらべてみた|ガイシャのススメ Vol.17

N-BOX パンダ

限られたスペースにあらゆる要素を詰め込んだ、箱庭のような「ホンダ N-BOX」

ホンダ N-BOX

今や、日本車の新車販売台数の1/3以上を占める軽自動車。2019年の軽自動車販売台数は、約190万台にも達しています。中でも売れ筋のひとつが、2011年に初代が登場した「ホンダ N-BOX」です。

軽スーパーハイトワゴン市場に投入されてから、あっという間にベストセラーに。2017年にフルモデルチェンジをして2代目になり盤石の体制を築き、軽四輪車の新車販売台数で、2015年以降5年連続1位という記録を打ち立てました。

日本最小の軽規格いっぱいに空間を拡大するマジック! ホンダのセンタータンクレイアウト

ホンダ N-BOX(初代モデル)

初代N-BOXのポイントは、軽自動車という決められた外寸の中で、いかに広く使い勝手が良いかを研究し尽くしたパッケージング。

ホンダお得意の「センタータンクレイアウト」によって低くて広いフロアを実現、エンジンルームもコンパクトに抑えたことで、軽自動車とは思えないほどの広さを誇りました。初代を大きくブラッシュアップした2代目では、プラットフォームを刷新。さらに室内空間が広くなり、内外装の質感や走りも大きく向上しました。

クルマ選びに迷うならまず推奨しておきたいクルマ

ホンダ N-BOXカスタム

先進の安全装備も充実し、現行モデルでは「Honda SENSING」を全車標準装備しています。

小さなサイズなのに広大なスペースを有し、快適装備・安全装備を満載したN-BOXは、細かな要素を規定の枠内に見事に埋め込むことを得意とする、「日本の箱庭文化」を思わせるクルマだと思います。

とにかくクルマ選びに迷ったら「老若男女問わず間違いない1台」として広く推奨できちゃうほど全方位で死角のないクルマと言え、だからこそ実際に連続No.1を獲得し続けているのでしょう。

これがイタリアの最小サイズです「フィアット パンダ」

フィアットパンダ 40周年 3代目

日本には排気量上限660cc、全長3400mm・全幅1480mm以内という独自の軽自動車規格がありますが、世界的なクラス分けでは、最も小さいクルマはフォルクスワーゲン UP!、スマート フォーフォー、ルノー トゥインゴなどの「Aセグメント」に分類されます。

フィアット 500(チンクエチェント)

小型車の本場・欧州では各自動車メーカーがAセグメントの車種を擁しており、欧州随一の大メーカー・イタリアのフィアットも「500」(チンクエチェント)や「パンダ」をラインナップしています。

日本でも人気がある500 ですが、500はどちらかというとスペシャリティーカー的な存在で、フィアットのボトムライン車種を本来担うのは、実用性が高い「パンダ」です。

簡素なのに「さすがイタリア!」と思わせるセンスにあふれている

フィアットパンダ 40周年 初代

現行型のパンダは2011年から販売中の3代目。平面的なデザインが特徴で、3ドアのみだった初代パンダと異なり、ミニSUVのような雰囲気の5ドアハッチバックに生まれ変わった「2代目パンダ」のコンセプトを引き継いでいます。

フィアット パンダには、必要最小限の気筒数で十分なパワーを発生する「ツインエア」2気筒エンジンが積まれています。

ツインエアエンジンは、いにしえのフィアット500に積まれていた2気筒エンジンのように、ポロロロロ……とのどかに牧歌的に回ります。丸と四角を融合したような「スクワークル」と呼ばれる内外装デザインも特徴です。

フィアットパンダ 40周年 2代目 後期

カドを取った四角形は、ヘッドライト、リアクォーターウインドウ、リアフォグ・バックランプから空調のスイッチ類、メーター形状など、車内外のあちこちに配されており、よく見るとクルマ全体のフォルムも、スクワークルでまとめられていることに気がつきます。

小型車でもファッショナブル! さすがデザインの国・イタリアが生んだクルマです。

日本の軽とパンダでは勝負にならないかもしれないけれど……

フィアットパンダ 40周年 初代 4×4

初代パンダの販売開始から、今年で40周年を迎えました。初代と2代目・3代目ではカタチが大きく異なりますが、共通しているのは、余計な要素がなく、使い心地がいい雑貨のようなクルマ、ということです。

フィアットパンダ 40周年 3代目

もちろん、最新のパンダも現代のクルマですので、快適装備はすべて備わっています。でも、N-BOXをはじめとした国産の軽自動車に比べて、さらに豊富な装備、シートアレンジ、広大な室内空間、そして上級車なみの内装を、パンダは備えていません。

フィアットパンダ 40周年 3代目

2020年5月現在で発売中の現行型フィアット パンダは「Easy」が224万円です。

軽自動車の価格帯が高くなったとはいえ、N-BOXシリーズの売れ筋ゾーンの価格は150〜160万円ほど、最高値は「N-BOカスタム」の「G EX ターボ Honda SENSING 4WD」の212万円ですので、パンダよりもN-BOXがずっとお買い得なのは、間違いありません。

パンダを買うと、「自由」という “最高の装備” がついてくる

フィアットパンダ 40周年 2代目 後期

でも、あえてパンダをお勧めしたいのです。その理由は、パンダは、初代からずっと、とても自由を感じさせ、小さいことをまったく恥じないクルマだからです。

室内の仕上がりは、国産車に比べるとプラスチック感があります。だけどそれを逆手にとって、優れたデザインでコンパクトカーらしさをあえて表現しています。パンダというクルマには、車格というヒエラルキーに属さない独自の世界観があります。上も、下も見ていないのです。

気負いしなくていい、気軽な存在

フィアットパンダ 40周年 2代目 前期

だからパンダは、気軽に遊べるパートナーのように、“存在が重くない”。いろいろな景色をパンダで見に行きたい。オシャレなカフェにパンダも連れて行ってあげたい。ふつうに日用品の買い物に行きたい……。そんな時、パンダならすぐ、気取らずに出発できそうです。

全長3.6mほどのコンパクトさは、軽自動車並みの小ささ。気軽にどこへでも出かけられます。国が地続きの欧州ではロングドライブはあたりまえなので、パンダも足腰は鍛えられていおり、遠くに出かけてもヘッチャラです。

たしかに、軽自動車も気軽に乗れます。でも、パンダはもっと「ラク」な感じがするのです。「素材がよく、歩き心地もよく気軽に履けるオシャレなスニーカー」のように。履いていて足が痛くなる靴より、どこまでも歩いて行けそうな靴のほうがいいですものね。

フィアットパンダ 40周年 初代

以前筆者も、現行型以上に何も装備がない初代パンダを所有していました。

ざっくりとした服を着て乗り込み、キャンバストップと窓を全開にして、お気に入りの曲をかけながら、大きな声で歌い、海を見に行ったりしました。

「ああ、自由だなあ」と感じたことを思い出します。パンダはとてもシンプルなクルマだけれど、自由という、最高の装備を持っているのです。

[筆者:遠藤 イヅル]

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