フォーミュラE:バーチャルで“替え玉”を使ったダニエル・アプトがアウディのシートを失う

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 5月23日、ABBフォーミュラE選手権が開催したバーチャルレース『ABBフォーミュラEレース・アット・ホーム・チャレンジ・サポーテッド・バイ・ユニセフ』第5戦で、シミュレータードライバーに“替え玉”を依頼したダニエル・アプトについて、アウディはアプトが実際のフォーミュラEでのシートを失うことになると発表した。

 この『フォーミュラEレース・アット・ホーム・チャレンジ』は、新型コロナウイルス感染拡大の影響でレースをすることができない電気自動車のレース、フォーミュラEが開催しているもの。実際にレースに参戦しているプロドライバーたちが自宅からシミュレーターでバーチャルレースを戦っていた。

 5月23日の第5戦でアウディスポーツ・アプト・シェフラーのダニエル・アプトは、トップ争いを展開して3位フィニッシュを果たしたが、各ドライバーを繋いでいた映像にも姿をみせなかった。フォーミュラEはレース後に調査を行い、アプト本人がこのレースには参加しておらず、別のシミュレータードライバーがアプトだと偽りレースに参加していたことが発覚した。

 すでにアプトは『スポーツ上の不正行為』で第5戦の失格および、これまでのフォーミュラEレース・アット・ホーム・チャレンジで獲得したポイントの剥奪、慈善団体への1万ユーロ(約117万円)の寄付を行うという裁定が下された。

 さらにこの処分に加え、アウディは5月24日、アプトに対してフォーミュラEのドライバーとしての資格を停止するという厳しい処分を発表した。

「彼(アプト)はレース翌日にこのことを直接謝罪し、失格を受け入れた」とアウディは声明を発表した。

「完全性、透明性、ルールへの一貫したコンプライアンスの厳守は、アウディにとって最優先事項にあたる。これはブランドが関与するすべての活動に適用される」

「このためアウディスポーツは、アプトの起用をただちに停止することを決定した」

 モータースポーツにおけるワークスドライバーの役割とは、レーシングドライバーとしてレースを戦うだけでなく、ブランドアンバサダーのイメージを担っており、企業のイメージ戦略に則った行動と言動を課されている。特にヨーロッパの企業のワークス活動では顕著だ。フォーミュラEは、アウディのモータースポーツ活動にとっても非常に大きなウエイトを占めている。

 またドライバーはスポーツマンシップに則って、世界の多くのファンへ夢と希望を与える立場であるべきで、特に子どもたちには模範的な立場が望まれる。新型コロナウイルスの影響で数多くの子どもたちもこのレースを観覧していたと思われ、アウディとしても許されざる行為だったと推測される。

 このレースはユニセフの後援を受けるなどチャリティイベントも兼ねており、単なる“お遊び”ではなく、フォーミュラEにとっても重要なイベントだっただけに、アプトの軽率な行動は彼の今後のレースキャリアにも影響しそうだ。新型コロナウイルスの影響でモータースポーツではバーチャルレースが展開されているが、NASCARではカイル・ラーソンが人種差別発言で現実のシートを失っている。

フォーミュラEレース・アット・ホーム・チャレンジでのダニエル・アプトの走り
ダニエル・アプト(アウディスポーツ・アプト・シェフラー)
グータッチを交わすダニエル・アプトとルーカス・ディ・グラッシ