【コラム】「断腸の思い」の甲子園大会中止 考えたいコロナ後の高校野球

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夏の甲子園大会が中止になった。新型コロナウイルスの感染拡大で4月中旬には緊急事態宣言が出るなど、開催が困難になった状況は分かっていたが、いざ中止が決まると虚脱感にさいなまれる。高校球児の心情を思うと切なくて、かける言葉も見つからない。

大会主催者の5月20日の記者会見をネットで見たが、「苦渋の決断」「断腸の思い」「痛恨の極み」という日本高野連・八田英二会長の言葉が重く響いた。コロナ禍の中では通常の風景となってきたオンラインの会見。そのやりとりの微妙な「間」には、どうしても違和感を覚えてしまう。

せめて無観客でも開催を、との声もあった。記者として高校野球を取材した私にもわずかな期待はあったが、深刻な現状を考えれば中止は残念だが致し方ないところだろう。八田会長の言葉通り、「(選手らの)安全確保が最優先課題」であり、長丁場の甲子園大会ではそれが担保されなかった。

各地の実情に合わせて、代替大会が行われる動きがあることがせめてもの救いだ。感染防止対策を徹底し、熱中症などにも気を配って、できるところはやってほしい。球児には励みになるだろう。

また「甲子園」という最大の目標を失った球児をどう導いていくのかも大きな課題となる。今春の選抜大会中止が決まった後、東北地区の代表3校での代替試合を模索した仙台育英の須江航監督は「ここまで努力してきたことが無駄ではないと、これからの日々で証明していきたいと思っている」とNHKのインタビューに答えた。オンラインミーティングを欠かさず、自主練習の選手を支える指導者は「ここからは大人の出番と思っている。道を示してあげて、ともに歩んでいきたい」と力強く語った。全国の監督の思いも同じだろう。

コロナ危機を乗り越えた先にある高校野球を考えることも大人の仕事だ。投手を守るための投球数制限の実施は既に決まり、「飛ばないバット」の導入も検討されているが、大会日程などにも大きく踏み込んでもらいたい。地方大会では決勝や準決勝前日に休養日を入れるところが多くなったが、開幕を早めて土日だけ試合を実施するといった余裕を持ったスケジュールは採用できないのか。1県1代表を基本とし、2週間以上にも及ぶ夏の全国選手権のスリム化は絶対に無理なのか。日程見直しが必至となる9月入学の議論は後退しているようだが、将来を見据えた取り組みが必要なのは言うまでもない。

【筆者略歴】後藤英文(ごとう・ひでふみ) スポーツジャーナリスト。共同通信では初代スポーツ専門特派員としてニューヨークで勤務。MLBワールドシリーズやW杯サッカー、NFLスーパーボウルのほか夏冬の五輪などを取材。元びわこ成蹊スポーツ大学教授。