「水谷世代」の今 卓球全日本V10の絶対王者を追った同級生たち

写真:水谷隼(木下グループ)/撮影:アフロスポーツ

「○○世代」という表現がある。

「ゆとり世代」「さとり世代」など、用途は幅広だ。最近でいえば、「お笑い第7世代」や「ミレニアル世代」という言葉をよく耳にするかもしれない。

実は、この表現はスポーツ界でもよく用いられている。

スポーツ界での「○○世代」とは、往々にして、1人の突出した選手がいたり、トップ選手が同学年に集まっていたりする場合を指すことが多い。プロ野球ならば、横浜高校から西武ライオンズに進んだ平成の怪物・松坂大輔を中心とした「松坂世代」が広く知られている。

写真:左から平野美宇伊藤美誠早田ひな(2018年世界卓球時)/提供:新華社/アフロ

卓球界でもここ最近「黄金世代」と評される世代が台頭している。伊藤美誠(スターツ)、平野美宇、早田ひな(ともに日本生命)を中心とした2000年生まれの世代だ。伊藤、平野は石川佳純(全農)とともに東京五輪代表に内定しており実力は折り紙付き、早田も2人に負けじと徐々に力をつけ、2020年1月には全日本選手権を制した。

「水谷世代」の今

1人の突出したプレーヤーの存在から、「○○世代」が誕生することが多いのはなぜだろうか。

その答えを探るには、「あいつに負けたくない」という反骨心の存在が1つのカギとなるだろう。

同世代でありながら圧倒的な成績を残し、注目の的となっている選手。悔しい思いをさせられることが大半だ。その一方で、常に一歩先を行くその選手を追いかけたいという気持ちを原動力に、歯を食い縛って練習に励んだ選手もいるだろう。

写真:水谷隼(木下グループ)/撮影:ラリーズ編集部

そこで今回は、日本卓球界で唯一無二の偉業となる全日本選手権V10を成し遂げた水谷隼(木下グループ)の同世代を紹介する。

松平賢二

経歴:青森山田高校→青森大学→協和キリン
主な戦績:2011年度全日本選手権シングルス第3位、2014年度全日本社会人選手権シングルス優勝

写真:松平賢二/撮影:ラリーズ編集部

水谷と同学年の選手の中でも、特に水谷と関係が深い選手の1人が松平賢二だ。水谷とは青森山田高校の同級生、2007年のインターハイでは水谷をペアを組みダブルス優勝を飾っている。

現在は、日本リーグ・協和キリンに所属。また、2018年には琉球アスティーダからTリーグにも参戦した。2019年には日本リーグ選手会を発足し、初代選手会長を務めている。

そんな松平をしても、水谷に勝ったのは「たった2回しか記憶にない」というから驚きだ。

御内健太郎

経歴:上宮高校→早稲田大学→シチズン時計
主な戦績:2016年度全日本選手権シングルスベスト16、2018年度後期日本リーグ1部最高殊勲選手賞

写真:御内健太郎(シチズン時計)/撮影:ラリーズ編集部

日本男子を代表するカットマンの1人。早稲田大学時代は主将として、水谷擁する明治大学と関東学生リーグで優勝を争った。卒業後は日本リーグ・シチズン時計に進み、現在は選手会副会長を務めており、日本リーグでは個人通算50勝を記録している。

濵川明史

経歴:上宮高校→近畿大学→日鉄住金物流→andro japan
主な戦績:2018年度全日本選手権シングルスベスト16

YGサーブが代名詞のサウスポー。2008年の全日本大学総合選手権で水谷に土をつけた実力者。引退を決めて臨んだ2018年度全日本選手権で初のランク入りを果たしている。現在はandro japanにて第二の卓球キャリアを歩んでいる。

笠原弘光

経歴:東山高校→早稲田大学→協和キリン→シチズン時計
主な戦績:2015年度全日本選手権シングルス第3位、2019年度全日本選手権ダブルス第3位

写真:全日本での笠原弘光(シチズン時計・写真右)/撮影:ラリーズ編集部

早稲田大学時代は、御内らとともに関東学生リーグで活躍。早稲田の笠原、明治の水谷としてしのぎを削ったライバルだ。

笠原の関東学生リーグでの通算成績は圧巻の54勝2敗。その2敗を喫した相手が水谷だというから恐ろしい。自身の結婚式の際には、「Best Friend」という文面とともに水谷とのツーショット写真をツイートしている。

水谷という巨大な存在を追い続けた沢山の選手たち、彼らへの敬意とともに「水谷世代」の今後にも注目だ。

文:石丸眼鏡

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