自宅作業で「机と椅子」は買い替えるべき? 「快適な仕事環境」はどこまで必要か

新型コロナウイルスの感染拡大に伴いリモートワークも推進されましたが、慣れない自宅での仕事に「仕事がやりづらい!」という声も多数上がりました。そうした方々の中には、「やっぱり会社の机と椅子って仕事がしやすかったんだな……」と感じ入ったケースも多かったようです。元々自宅は仕事仕様ではないため、座れる場所なんて座椅子やダイニングのテーブルぐらい。自分自身の「書斎」なんてものはないでしょうから、こう実感したのでしょう。

そして、急遽机や椅子を買った方もいらっしゃいます。フェイスブックではこうした報告をいくつも見ましたし、長らく続くリモート会議でもそうした報告を聞きました。しかしながらこれって自腹だったのであれば、けっこうな出費になったはずです。テレワーク歴20年の私からすれば、「今ある環境でなんとかなるのでは……」なんてことも思います。

さすがに「仕事部屋がないと子供が寄ってきて仕事なんて無理!」という方には向けておりません。独身だったり配偶者が子育てをやってくれているような方に向けたものです。


机・椅子は生産性に関係しているのか

正直、机・椅子の素晴らしさと年収や仕事を上手にまわすことの相関性はないと思います。見てください、私の仕事場の机と椅子。こんなショボ過ぎる机と椅子でずっと仕事をし続けてきました。今や背もたれさえなくなったこの椅子ですが、むしろ後ろによっかかったりできないため、短期集中で原稿や企画書を書く時はこの方がいいです。

パソコンさえあれば仕事なんてできるので、パソコンを置くスペースさえあればいいのでは。私の机は、キャビネットの上に、幅65cmほどの板を乗せただけのものです。これで7年仕事を続けられています。

元々はこの板は会社員時代の先輩からもらった大きな組み立て式机の一部でしたが、12年ほどかけて次々と壊れていき、最後に残ったのがこの板なのです。この「日本有数のボロい社長机」ともいえそうな机ですが、この机になってから別に売り上げがかわったわけでもなんでもありませんし、リモートワークもこなし続けています。

結局「普段通りの仕事ができない!」という件については「慣れるしかない」わけで、それを契機として快適な机と椅子を買ったとしてもリモートワークが終わった時は邪魔なだけです。リモートがこのまま継続される会社もあるかとは思いますが、とはいっても「不自由」ってものはすぐに慣れるものです。

私も椅子の背もたれがポロリと落ちてしまった時は「うわ、こりゃ新しい椅子を買うしかないな……」と持ったものの、ないまま1週間過ごしたらもう慣れてしまい、今では背もたれなんて邪魔でしかありません。

"快適な仕事環境"への違和感

とはいっても、人間の身体に合わせた快適な椅子や机は存在するわけです。それを買った方が間違いなく生産性は上がる! という反論をしたくなるでしょうが、ここでネックになるのが人間の集中力です。

多分、2時間以上は続かないと思います。私は2時間が限界です。その時は腰も若干疲れていますが、何をやるかといえば、寝てしまうのです。布団の上で本を読んだりニンテンドー3DSを15分ほどやって身体を休めるとともに、気分転換をする。

そうすると、15分後には再び普通にオフィスワークができるようになります。残業時間が減ったり、リモートワークにより成果が下がった結果給料も下がった方などはこの時期、出費を抑えることを心掛けなくてはいけないのに、「快適な仕事環境を作る」ということで余計な出費をしてしまったのでは。

会社がその分を出してくれるようなホワイト企業であれば万々歳ですが、世の中そんな企業ばかりではありません。

そして、コロナ禍終了後、果たしてその机と椅子がどれだけの価値を生み出したかは冷静に分析した方がいいと思います。何しろ「環境が充実していないから自分は仕事ができない」なんて問題意識から買ったわけです。しかし、劣悪な労働環境なんてもんは、出張先やら移動中などいくらでもあるわけで、その時々にいちいち文句を言っていたか? 特に文句を言っていなかったのであれば、多分自宅もあまり問題なかったとも思います。

何が言いたいかといえば、仕事人たるもの仕事の不具合を「環境」のせいにするのではなく、「自分の能力・心構え」のせいにした方が能力は高まりますし、「できない言い訳」をしないで済むんじゃないかな?ということです。

© 株式会社マネーフォワード