フォーミュラEオンライン替え玉事件。アプトの契約解除についてアウディが声明「ミスではなく意図的なルール違反」

 フォーミュラEのバーチャルレース『レース・アット・ホーム』の第5戦で“替え玉”を使ったことで罰金処分などを受けたダニエル・アプトについて、所属するアウディ・スポーツが27日、アプトとの契約解除の理由を明らかにする声明をSNSにて発表した。

 アウディスポーツ・アプト・シェフラー所属のアプトは、5月23日の第5戦でシミュレータードライバーを替え玉にしてレースに参加。3位フィニッシュを果たしたが、レース後の調査で替え玉が発覚し、当該レースでの失格処分やバーチャルレースで獲得してきたポイントの剥奪、慈善団体へ1万ユーロ(約117万円)の寄付を行うなどの裁定を受けた。

 この件を重く見たアウディはレース翌日の24日、「アウディスポーツは、アプトの起用をただちに停止することを決定した」としてアプトとの契約解除を発表した。

 アウディの決定を受けて、すぐにアプトは自身のYouTubeチャンネルにて声明動画を投稿。「オンラインレースでの結果なんて、僕にとってはまったく重要ではなく、ただファンを楽しませることだけが目的だった」「大きな過ちを犯してしまったし、その罰は甘んじて受け入れる。だからどうか許して欲しい」と弁明を述べたが、その後、アウディがアプトとの契約解除の理由についての声明を発表した。

「ダニエル・アプトは、2014年9月のデビューからアウディのフォーミュラEチームの一員として6年間で合計63レースを戦い、2017年の秋からは公式ファクトリードライバーを務めていたが、彼が今後、我々のフォーミュラEをドライブすることはない」

「彼はメキシコ、そして私たちのホームラウンドのベルリンとフォーミュラEで2度の素晴らしい勝利を収め、合計10回の表彰台を獲得した。ダニエルと私たちはお互いの成功を祝福し、フォーミュラEで大きな進歩を遂げた。彼と共に過ごせた時間に感謝し、それらを誇らしく思っている」

「しかし、誠実さ、透明性、ルールへの一貫したコンプライアンスの厳守は、アウディにとって最優先事項にあたる。私たちは間違いを容認するという文化を支持しているが『レース・アット・ホーム』での出来事は単なるミスというものではなく、ルールに違反するという意図的なものだった」

「私たちにとってそれは大きな違いだ。したがって、残念ながら彼の起用を停止する以外に選択肢はなかった」と、アウディ・スポーツの公式SNSでコメントを投稿した。

 ダニエル・アプトはアウディスポーツ・アプト・シェフラーの一翼を担うアプト・スポーツラインのハンス-ユルゲン・アプト代表の息子であり、開催初年度である2014/15年シーズンからフォーミュラEに参戦。アウディスポーツ・アプト・シェフラーはこれまでの6シーズン全戦をルーカス・ディグラッシとアプトの布陣で戦ってきたが、今回の契約解除に伴い2019/20年シーズンが再開される際にはチーム史上初めてドライバーが変更されることになった。

2019/20年シーズンの第5戦マラケシュのダニエル・アプト(アウディスポーツ・アプト・シェフラー)
フォーミュラE開催初年度の2014/15年シーズンからアウディと共に戦ってきたダニエル・アプト
2017/18年シーズン第9戦ベルリンで自身2勝目を獲得したダニエル・アプト(アウディスポーツ・アプト・シェフラー)

© 株式会社三栄