【#今こそひとつに】「言いづらいと思う。でもね…」 前田幸長氏が伝えたい保護者への感謝

プロ野球解説者で都筑中央ボーイズ会長を務める前田幸長氏【写真:編集部】

ロッテ、中日、巨人でプレーした前田幸長氏は都筑中央ボーイズの会長を務める

新型コロナウイルスの影響で「STAY HOME」の動きが広がっている一方で、厳しい状況の中でも医療従事者をはじめ、社会のインフラを支える人々は、見えない敵が迫る最前線に立ち、私たちの日々の暮らしを支えてくれている。こんな状況だからこそ、身近にいる人に、感謝の気持ちを抱く瞬間があるのではないだろうか。

「Full-Count」では、野球を好きな人が、感謝の気持ちを発信する特別連載【#今こそひとつに】をスタート。リアルな感謝の声をメッセージ動画とともにお届けする。

今回は、野球評論家の前田幸長氏。

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前田氏は1988年夏の甲子園、福岡第一のエースとして全国準優勝。同年、ドラフト1位でロッテに入団。その後、中日、巨人でプレーし。2002年の巨人日本一に中継ぎとして活躍した。引退後は野球評論家としてだけではなく、神奈川・都筑中央ボーイズの会長として、子供たちに野球と社会に出ていく上で大事なことを、伝えている。

今回、感謝を伝えたいのは野球少年、少女たちのお父さん、お母さん、保護者の方々だ。

緊急事態宣言下、チームは活動を禁止していた。25日に宣言が解除されたとはいえ、喜ぶわけにはいかない。

「私のチームはありがたいごとに、130人を超える部員がいますので、同じ場所で一気に野球ができるかというと、そうではありません。子供たちの安全を考えるならば、一日3班に分けたり、2時間、もしくは2時間半などに分ける必要があります」

子供たちに待ちわびた野球をやらせてあげたい反面、これからは対策をきちんと練っていかないといけない。

活動自粛中は、保護者からの多くの連絡を受けたという。特に前田さんが気にかけていたのは4月から中学1年生になった新規の部員たちだった。

「新2・3年生は都築(克幸)監督の考えをある程度、分かっていると思いますが、新戦力はそうはいきません。1か月半以上も遅い、いつもと違うスタートだから、こちらとしても、非常にもどかしい部分ではあります」

4月から目一杯、中学野球を楽しみにしていた子供たちを思うと胸が痛くなる。保護者からも、練習の開始時期や施設の利用の問い合わせなども寄せられる。前田氏も愛息が野球をやっているから保護者の気持ちはよくわかるが、だからといって子供たちの安全を犠牲にすることはできない。

ボーイズの卒団式でも伝えている言葉「面と向かって言わなくてもいいけど…」

選手たちには、自粛期間中の時間を「無駄にしないでほしい」と伝えてきた。

「今、プロ野球選手がたくさんツイッターやインスタグラム、YouTubeで練習動画、家で実践できる方法などをアップしてくれています。『誰のを見なさい』とかではなく、自分に必要なものを、取り入れられることができればいいんじゃないかな、と思っています。自分の引き出しが増えるという話はしています」

メジャーリーガーだったらツインズの前田健太投手、巨人やロッテなどが積極的でにYouTubeを発信していることを例に挙げて、元プロとしての見解を子供たちに届けている。

そして、この期間に感じてほしいことは、当たり前が、当たり前ではないという現実があるということだ。

「子供たちは親になかなか照れくさくて、ありがとうって言えないと思う。面と向かって、言わなくてもいいけれど、でもね、いつか必ずそういった気持ちを、言葉や行動で示したりする時が来る。いつかそれに気が付くと思う。その時、気持ちがきちんと伝わるように、野球をする時に、言わなくてもいい。必ず、いつも周囲への感謝の思いを持って、プレーをしなさい、とよく(ボーイズの)卒団式でも伝えています」

子供たちが家にいる時間が増えて、保護者も負担が多少なりともあったはず。また元気に野球をする姿を見せてあげることが、周囲へのエネルギーにもなる。そのために、一人の指導者として何をしてあげられるか……前田氏は現実と向き合いながら、少年野球とともに歩んでいく。

○Full-Countでは、特別連載【#今こそひとつに】をスタートさせました。新型コロナウイルスの感染拡大で社会状況が厳しい中、誰もが「命を支える人」「生活を支える人」「社会を支える人」に感謝の気持ちを抱いた瞬間があると思います。医療従事者や社会インフラの維持に尽力する人たちにその思いを届けたい――。人と人との“距離”が遠い今だからこそ、みんなの心をひとつにしたい――。頑張る人たちにエールと感謝の気持ちを届けるため、様々な「声」を発信しています。また、18日に開設した新サイト「HEARTS AS ONE 今こそひとつになろう」では、野球界以外からも寄せられている著名人らのメッセージ動画も多数公開しています。(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)

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