国家安全法導入反対に1000人以上の香港市民がデモに参加~現地に訊くその実情

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(5月28日放送)にジャーナリストの鈴木哲夫が出演。香港中文大学の石井大智さんを電話ゲストに迎え、中国の国家安全法の制定と香港の現状について解説した。

27日、香港のデモで、取っ組み合いになる警官隊とデモ支援者(ゲッティ=共同)=2020年5月27日 写真提供:共同通信社

中国、国家安全法処罰対象をデモ参加者に拡大

中国による香港の国家安全法と中国国歌の侮辱を禁じる「国歌条例案」の制定に向けた動きを受け、香港では27日に反発する1000人以上の市民による抗議活動が行われた。デモ隊に対し警官隊は催涙弾などで鎮圧。360人以上が違法集会参加などの疑いで逮捕されている。

飯田)いま北京では全人代が開かれています。きょう(28日)までの日程であろうと言われていて、このなかで香港版国家安全法が制定されると言われています。それに対してということもあり、24日と27日に香港でデモがありました。現地の香港はどうなっているのか。香港中文大学の石井大智さんにつないでお話を伺います。よろしくお願いいたします。

石井)よろしくお願いいたします。

飯田)27日も現場にいらっしゃったわけですか?

石井)そうです。いま私はずっと香港にいます。

飯田)逮捕者も360人以上ということでしたが、激しいデモだったのですか?

石井)昨日(27日)は国歌の侮辱を禁じる条例の審議をしているのですが、それを止めるために香港の議会である立法会の包囲が計画されていました。しかし、この立法会の周囲には前日夜から3000人以上の警官が配置されていたので、抗議者は立法会よりもさらに活動地域を拡大しました。その後、抗議活動は道路占拠に伴ってさまざまな地域に拡大し、昨日の時点で360人が逮捕されたという形です。

飯田)現地からの映像を見ていると、昼間から警官隊が相当に出ていました。その辺りは去年(2019年)のデモと比べて、かなり警察が増強されたということですか?

石井)目立った抗議をするのは勇武派というのですが、この勇武派の力が去年は目立ったのだけれど、その人数は去年の大学占拠以来、大分落ちていて、一方で警察は増強されているように見えます。また現在は、新型コロナウイルス感染防止のために、政府の規制で9人以上の集合が禁止されており、基本的にすべての抗議活動が違法なため、デモ現場にいるだけで逮捕されてしまいます。

香港の繁華街で行われた、国家安全法導入に対する抗議デモ。抗議者たちは中国共産党の滅亡を求めて「天滅中共」のポスターや「香港独立」の旗を掲げながらデモ行進した=2020年5月24日 写真提供:産経新聞社

国家安全法~中国政府が香港の法律をどのようにでも解釈できるようになる

飯田)いまはそういった容疑での逮捕になりますが、国家安全法がつくられると抗議活動そのものが取り締まられるようになって行くわけですか?

石井)国家安全法については、まだどのようなものが制定されるのか細かいことが不明で、実際にどのように運用されるのかまだわからないので、言いようがないのですが、国家安全法は国家の安全を害すると政府がみなせる行為すべてについて、違法化する法律で、香港の言論の自由を奪うと批判されています。

飯田)海外の勢力と彼らの言い方でつながったり、あるいは海外の勢力が香港へ入って来て活動したりすることも取り締まれるとされています。そうすると、石井さんの研究活動にも影響が出ますか?

石井)私は研究者のなかでは、比較的ポリティカルでニュートラルな立場を取っているのですが、それでも中国政府から見ると、どのようにも解釈できるというのは1つの怖さを持っています。今回の怖さは、中国政府が香港の法律をどのようにも解釈できると示したことです。香港は一国二制度のもと、中国本土とは大きく違う法体系を持っています。中国本土の法律は原則香港では適用されません。しかし、今回、全人代は香港の言論の自由を規制する法律を議会で直接通そうとしていて、今後、中央政府が香港の議会を通さなくても、何でも直接的にできてしまうのではないかという懸念が広がっています。

人民大会堂で、政府活動報告を聴く中国の習近平国家主席(中国・北京)=2020年5月22日 写真提供:時事通信

ほとんどの香港人が香港の将来に不安を感じている

飯田)そうなると、一国二制度どころか一国一制度になってしまう懸念。去年まで言われていたのは、親中国の人もいれば反中国の人もいて、市民のなかでグラデーションがあるという話がありました。例えば、日本で言う無党派の人たちの今回の国家安全法への受け止め方、それに対する抗議活動をどう思っているのでしょうか?

石井)香港は社会が大きく分裂しているので、無党派がどれくらいいるのか不明なのですが、香港民意研究所が5月19日~21日の間に行った世論調査によると、行政長官の不支持率は7割超えのままで、現在の政治情勢の満足度となると3%ほどになっています。これは政府寄りの人から抗議者寄りの人まで、幅広く出口の見えない香港の政治に、例外なく不満を持っているということが見受けられます。

飯田)その発露の仕方、マネジメントの仕方には評価があるけれど、全体としての出口の見えなさ。この気持ちはどういうところに向かって行くと思われますか?

石井)今回の国家安全法は経済にも影響を出しているわけです。いままで政府を支持していた経済エリートという人たちも、なかなか政府に賛同できなくなってしまうのではないか。そうなると社会がますます混乱に陥り、まったく香港市民の支持基盤がないまま、いろいろな話が進んでしまって、さまざまな混乱が引き起こされるのではないかと危惧しています。

「五大要求」を掲げて香港中心部をデモ行進する市民ら=2019年12月8日(共同) 写真提供:共同通信社

日本政府はポジションを早急に決めなければならない~最終的には巻き込まれる

鈴木)日本政府はアメリカとの関係や中国との関係もあります。日本政府は強いメッセージを出せていませんが、石井さんから見て日本政府にはどのようなメッセージを出して欲しいですか?

石井)この状況で、どうポジションを取るのかということは非常に難しいと思いますが、日本政府としては、国際社会がどう動くのかを踏まえて動くべきです。今回の国家安全法は、国際社会の強い反発を生んでいます。全人代で制定される法律を、香港の抗議活動によって止めるのは難しいのですが、この法律と抗議活動が国際社会に認知されて、中国に圧力がかかれば、事態は違った方向へ動くと考えて活動している抗議者は多くいます。中央政府はそれを無視してそのまま進めるかも知れませんが、そうなれば、アメリカが中国に対してより大胆な制裁をかける可能性があり、いずれにせよ、香港がポストコロナの国際社会を揺るがす場所になるわけです。つまり、日本政府が黙っていたところで、最終的に巻き込まれるのです。いま中国との関係を考えて黙っていても、どこかで自分たちのポジションを決めなければいけない瞬間が来るので、早目に、1人1人が香港情勢を理解して、どういう手を打つべきなのか考えることが大事だと思います。

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