プロ卓球選手・森薗政崇が高校生に伝えた大切なコト<森薗政崇オンライン講演会>

写真:オンライン講演会を行う森薗政崇/撮影:ラリーズ編集部

現在、まだ試合が行えない状況下ではあるが、卓球アスリートたちは、少しでもプレーヤーやファンを勇気づけ楽しませようと数々の取り組みを行っている。

5月26日、世界卓球代表の森薗政崇(BOBSON)が、茨城県の強豪校・明秀学園日立高校卓球部員に対し、Web会議システム「Zoom」を利用し講演会を開催した。今回はその様子を取材した。

プロ卓球選手・森薗が高校生を相手にZoom講演会

森薗のオンライン講演会は「インターハイや全中が無くなってしまったので、少しでも僕の言葉が支えになれば」と5月10日の静岡学園高からスタートしたものだ。今回の明秀日立が9校目で、現時点で13校目まで実施が決まっている。

明秀日立卓球部の吉田匡毅コーチが、別の学校を対象に開かれた会に参加し、今回開催される運びとなった。Zoomを用いたこの講演会には、男女総勢40名ほどの部員が参加し、約2時間に渡って森薗の言葉に耳を傾けた。

写真:森薗のオンライン講演会の様子/撮影:ラリーズ編集部

「森薗政崇という卓球選手はどんな風に見える?」、「ドイツに行って何に一番苦労したと思う?」など森薗から生徒たちに問いかける形式で会は進行した。

初めはプロ卓球選手を相手に緊張した面持ちだった生徒たちも、コミュニケーションを取るにつれ、次第に笑顔がこぼれるようになった。

森薗が伝えたかった「考え抜くことの大切さ」

森薗はこの会を通して「自らの卓球人生を振り返って、大切なことを伝えたかった」と語る。

実際に話の中では、青森山田中に入学した際、1つ上の代の“三枚看板”である丹羽孝希(スヴェンソン)、町飛鳥(FPC)、吉田雅己岡山リベッツ)の大きな壁に当たったことを例に出していた。

写真:森薗政崇/撮影:ラリーズ編集部

「僕は小学6年生でホープス優勝して順風満帆だった。ただ、中学に入って彼ら3人に全く勝てなくなった」。ここで森薗は「なぜだと思う?自分の言葉で言ってみよう」と高校生たちに質問を投げかけた。

生徒たちは「中学校と小学校の卓球が違うから」、「相手に研究されていた」などの答えをあげ、森薗は1つ1つに「いいね!」と丁寧に反応する。森薗が明かした正解は「自分で考えて卓球をしてこなかったから」ということだった。

そこから「なぜ自分は勝てないのか」を自問自答して考え抜き、1年2ヵ月かかり新たなプレースタイルを構築したという。その結果、全中やインターハイで優勝、現在は世界卓球代表にまで上り詰めたというエピソードを披露した。

写真:世界卓球代表選考会で優勝した森薗政崇(BOBSON)/撮影:ラリーズ編集部

「自分の頭で考えて、自分の身体で実行して、自分で責任を取ることが大事。とにかく1つのことに対してなぜ?なぜ?と深掘りしていく。そして行きついた答えをまずは実践する。そこで失敗してもまた考え直せばいい。この思考法をこれからの人生や卓球道に落とし込んでいってほしい」と考えることの大切さを伝えるとともに熱いエールを送った。

質疑応答では鋭い質問も

実体験を交えながら1時間ほど話した後、生徒たちとフリーの質疑応答タイムが設けられた。「チキータのコツ」や「おすすめの練習方法」、「彼女はいるんですか?」など高校生の多岐に渡る質問に1時間ほどしっかりと回答し、計2時間強に及んだオンライン講演会は幕を閉じた。

写真:森薗の言葉に耳を傾ける明秀日立卓球部の生徒たち/撮影:ラリーズ編集部

最後に、明秀日立卓球部の女子主将鷲山さんは「自分の考え方を見直したり、練習のやり方も考え直したりする機会になりました。ありがとうございました」と森薗に感謝を述べると、男子主将の助川さんは「人生や卓球道を大きく左右する高校生活。このことを聞いてない人に伝えたり情報発信したり、自分たちにできることをしていきたいです」と今後に向けて意気込んだ。

写真:オンライン講演会を行う森薗政崇/撮影:ラリーズ編集部

森薗も「最後までみんな集中して聞いてくれてありがとうございました。これからのみんなの卓球人生が素晴らしいものになることを祈ってます!」と感謝で締めくくった。

高校生の青春とも言えるインターハイが中止となり、新型コロナウイルスの影響で部活もままならない状況が続く。

だが、プロスポーツ選手が生の声で真剣に語る思いは、2時間というわずかな時間ながらも学生たちとっては前に進む1つのきっかけとなったことだろう。

取材・文:山下大志(ラリーズ編集部)

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