川に注ぐ水

 「永」という字は、川がくねくね曲がりつつ、果てしなく続くさまを表すという。「永久」「永続」と、時間についてよく用いられる▲時に曲折はあっても、永く、緩やかに続くはずだった生活、事業がいま、日本のあちこちで行き詰まっている。ウイルス拡大で大打撃を受けた経済を立て直そうと、政府は31兆円を超える第2次補正予算案を固めた▲25兆円台の第1次補正予算を抜く。干上がりそうな川に大量の水を注ぐのは、生活の場、働く場を永年にわたり守る意思の表れ-に見えるが、政府は少し前まで「第2次」に巨費を積むつもりは全くなかったという▲安倍晋三首相が全世帯に配ると表明したマスクは、不足がほぼ解消した今も、一部にしか届いていないらしい。「税金の無駄使い」と難じる声も根強い。10万円給付などの支援もなかなか行き渡らない。何かにつけて「遅い」と批判がある▲休業手当をもらえない働き手は不満を持ち、アルバイト収入が途絶えた学生からは支援を求める声が上がった。対策が「足りない」という批判もある▲支持率が急落する中、どうやら巨費を投じて不満を抑えるつもりらしいが、急ごしらえの策にまたも「遅れ」が生じたら、国民の不満はさらに増すだろう。勢いよく水を注いだつもりが、火に油を注ぐようではいけない。(徹)

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