<いまを生きる 長崎コロナ禍> 民生委員「こんなときこそ関わりを」 手探りで活動再開

 子どもからお年寄りまで地域住民の相談に乗ったり生活を支援したりする民生委員。新型コロナウイルス感染拡大で、佐世保市では今も活動が制限される状況が続く。一方、「こんなときだからこそ市民と関わるべきだ」と、手探りで活動を再開する動きもある。

 「お久しぶり、行ってらっしゃい」

 同市内の小中学校が再開した18日朝。同市祇園町の市立祇園小の校門下で、民生委員の林俊孝さん(74)が子どもたち一人一人の顔をのぞき込み声を掛けた。母親に励まされながら坂を上る1年生や照れくさそうに校舎へ急ぐ上級生。「2カ月半ぶりだからね」。久々に見る子どもたちの表情に思わず笑みがこぼれた。

登校する子どもたちに声を掛ける林さん=佐世保市内

 新型コロナによる緊急事態宣言の解除から2週間。町が少しずつ活気を取り戻す中、地域住民を見守る民生委員の活動は今も制限されている。市内の民生委員の平均年齢は67.6歳。民生委員と住民双方の感染リスクを考慮し、「気になる」世帯の訪問や高齢者向けの居場所づくりなどの活動は原則として自粛中だ。

 林さんは市中心部の光園地区の民生・児童委員協議会の会長。全国団体からの通知を受け、3月から家庭訪問や学校での朝のあいさつ運動を自粛してきたが、学校再開に合わせ再び通学路に立ち始めた。
 これまで、毎朝、子どもたちと言葉を交わす中で、家庭での出来事や体調の変化を察知。子育てに手が行き届いていない家庭だと分かれば、学校に連絡し解決に向けて動いてきた。「子どもの顔を見て地域の状況が分かる」。林さんは活動の意義を強調する。
 一方、一人暮らしの高齢者世帯などへの訪問は今も控え、電話連絡のみ。民生委員同士の情報交換の場も開けずにいる。民生委員の活動を通じて、もし自身が感染すれば家族に迷惑を掛けてしまう。だが、地域のお年寄りと直接会って世間話をしたり、家の散らかり方を見たりして気付く困り事もあるのだが…。林さんはジレンマを抱える。
 市北部の大野地区で民生委員を務める河内秀之さん(66)は、感染拡大後、郵便受けや洗濯物を見て、気掛かりな家庭に変化がないか確認するようになった。近所で住民を見掛けたときには離れた場所から手を振って表情を確かめる。「こんなときだからこそ普段通りの関わりを続けるべきだ」と河内さんは語る。
 長崎ウエスレヤン大の岩永耕准教授(地域福祉学)は、新型コロナの民生委員への影響について「『近すぎず遠すぎず』の存在だからこそ話しやすいことがある。近所付き合いが希薄化する中で地域の福祉の力が弱まりかねない」と危惧。特に外出を控えがちで、SNSでつながりを持ちにくい高齢者に対しては防災行政無線を使って運動の仕方を発信するなどの方法を提案。コロナ禍でも、お年寄りの孤独感を和らげる工夫が必要だとした。

 


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