豪州SC:eスポーツ第8戦インテルラゴス&フィリップアイランドはSVG、パスカーレが勝利

 オーストラリアの人気ツーリングカー選手権、VASCヴァージン・オーストラリア・スーパーカーのeスポーツ・シリーズ『Supercars All Stars Eseries』第8戦が5月27日(水)に開催され、シェーン-ヴァン・ギズバーゲン(ホールデン・コモドアZB/Triple Eight Race Engineering)が地元フィリップアイランド、ブラジル・インテルラゴスの2戦を制し、ポイントリードを拡大。アントン・デ・パスカーレ(ホールデン・コモドアZB/Erebus Motorsport)もブラジル初戦で4勝目を挙げている。

 事前のアナウンスではホセ・カルロス・パーチェとして知られたサンパウロのF1トラックに加えて、イタリアのイモラが開催候補地となっていたSupercars All Stars Eseries第8戦だが、この欧州の古典的トラックでのイベントは直前にキャンセルされ、ファン投票の実施が決定。ベルギーのスパ・フランコルシャンとフィリップアイランドというSNS投票の結果、オーストラリアが誇る風光明媚な名物トラックがレース1の舞台となることが決まった。

 その予選セッションで印象的な活躍を演じたのは、このスーパーカーのスタードライバーたちとおなじフィールドで争う権利を得るため予選会を勝ち抜いてきたフォーザン・エル-ナビ(フォード・マスタング/BP Ultimate Racing)で、ワイルドカード枠のiRacingドライバーは選手権首位のヴァン・ギズバーゲン(SVG)を打ち負かし、パスカーレを3番手セカンドロウに押しやるスピードを披露。

 チャズ・モスタート(ホールデン・コモドアZB/Walkinshaw Andretti United)や王者スコット・マクラフラン(フォード・マスタング/DJR Team Penske)、リー・ホールズワース(フォード・マスタング/Tickford Racing)らも従えてデビュー戦ポールポジションを獲得し、レース2のブラジルに向けても“予選最速男”パスカーレと最前列争いを展開してフロントロウ2番手を確保してみせた。

 しかしエル-ナビにはいきなりの重圧がのし掛かったか、レース1スタートではミスを犯し後続に飲み込まれると、SVGが順当なダッシュを決めて1コーナーへ。パスカーレは前走のライバルをかわそうと逸り、グラベルにマシンを落としてポジションを下げるが、大きな混乱はなくオープニングラップのコントロールラインを通過していく。

 そうしてレースが比較的クリーンに立ち上がったと思われた2周目。やはりeスポーツらしいアクシデントが発生し、DJR Team Penskeのファビアン・クルサード(フォード・マスタング)がターン3で姿勢を乱したのを契機に、ブライス・フルウッド(ホールデン・コモドアZB/Mobil 1 Middy’s Racing)、アンドレ・ハイムガートナー(フォード・マスタング/Kelly Racing)らが巻き込まれるマルチクラッシュが発生する。

 その間隙をぬってポジションを上げたのがパスカーレで、チームメイトのデビット・レイノルズ(ホールデン・コモドアZB/Erebus Motorsport)やホールズワースをパスして、4周目には3番手にまでカムバックしてくる。

 12周18分、1ピット義務のレースでタイヤ交換ルーティンが一巡すると、首位はWAUのモスタートに代わり、それをSVGが追走する展開に。すると1コーナーで仕掛けたSVGがすぐさまトップラン奪還に成功する。

第8戦レース1の会場は、ファン投票で選出されたフィリップアイランドに。ここで伏兵が鮮烈なポールポジション・デビューを果たす
予選でワイルドカード選手に定位置を取られたアントン・デ・パスカーレだが、サンパウロではコンマ5秒差をつける圧巻の最速タイムを記録する
レース巧者の2016年VASC王者、シェーン-ヴァン・ギズバーゲンが、幸先よくこの日最初のレースを制した

 するとその背後ではドラマが発生し、おなじラップで4番手争いを展開していた王者マクラフランとエル-ナビが攻防中に接触。マスタング同士のバトルでVASC連覇中のShell V-Powerカラーのマスタングがスピン、コースオフを喫してトップ10圏外に沈む結果に。これにより、プッシングしたエル-ナビには失意のドライブスルー・ペナルティが宣告される。

 終盤には2番手争いを制したパスカーレがモスタートの前に出てファステストを刻みながらSVGに迫ったものの、逆転には届かずチェッカー。レッドブル・レーシング・オーストラリアのエースが第7戦に続く4連勝を飾り、パスカーレ、モスタートのホールデン勢がトップ3を占拠する結果となった。

 続いてVASC初開催の舞台となったサンパウロのトラックでは、通算7度目のポールシッターとなったパスカーレを先頭に、フロントロウ2番手にエル-ナビ、セカンドロウにSVGとパスカーレ、そして3列目にマクラフランとハイムガートナーのマスタングが並ぶ隊列でスタートが切られた。

 順当にホールショットを決めたパスカーレに続いて2番手で飛び込んできたのはSVGで、エル-ナビはバトルの際にウォールを擦るなど、またもスタートでポジションを失ってしまう。さらにその背後ではモスタートとのタッチでマクラフランがスピンオフし、王者には2戦連続で厳しいレースとなってしまう。

 しかしここから意地を見せたのは初参戦エル-ナビで、そのまま2番手SVGを激しく責め立てると、1周目の後半セクターで鮮やかにオーバーテイク。ポジション奪還を果たしてホームストレートに帰ってくる。一方、ワイルドカードのドライバーを前に出したSVGは、このオープニング時点でピットへと向かい2セット目のタイヤに履き替えて、後方20番手から逆襲を期す奇策に出る。

 その後、比較的穏やかに推移したレースは首位パスカーレを猛追後アンダーカットに出たエル-ナビの策も実らず。1戦目のフィリップアイランド同様12周18分、1ピット義務を終えたところでパスカーレがトップチェッカーをくぐりeシリーズ4勝目をマーク。エル-ナビがデビュー戦の夜に初表彰台を獲得し、3位にはレースのほとんどを2セット目のタイヤで走破したSVGが巻き返す結果となった。

 そしてこの日最後のレース3はサンパウロでの20周31分、2回のピット義務を課されるリバースグリッド勝負に。そのポールについたのはエル-ナビとおなじくワイルドカード枠でありながら、直前にリアルなシリーズでのフォード陣営復帰をアナウンスしたジェームス・コートニー(フォード・マスタング/Tickford Racing)だったが、この2010年王者が“マルチ・カー・パイルアップ”の引き金に。

 ターン3を抜けて早くも後続に飲み込まれたリバースポールシッターは、ターン5のポジション争いで接触し、インサイドのウォールに弾かれコースを横断。通過中だった後続車列が次々とクラッシュする事態となり、これでセーフティカー(SC)が発動、ダメージを負ったドライバーだけでなくほぼ全車がピットへとなだれ込む。

 4周目のリスタートではステイアウトを選択したハイムガートナーとリック・ケリー(フォード・マスタング)のKelly Racing勢がレースを引っ張る展開となるも、2度のルーティンを終えたころにはオープングラップのSC発動に助けられたマクラフランがなんと首位を走る展開に。

 すると17周目にその背後に迫ってきたのがSVGで、両者は並んで1コーナーから“セナS”をクリアすると、ターン4のブレーキングでSVGが首位浮上に成功。直接勝負で現役王者を降したeシリーズ選手権リーダーが通算11勝目を飾り、モスタートが最後の表彰台スポットを確保した。

 続く6月3日(水)開催の『Supercars All Stars Eseries』第9戦は再びオーバルでの開催が決定し、北米のミシガン・インターナショナル・スピードウェイが舞台に。ル・マンやロードアメリカ、ラグナセカなどが候補に挙がるふたつ目のトラックを含め、詳細は近日中にアナウンスされる。

フィリップアイランドの決勝では王者に対して失態を犯したフォーザン・エル-ナビだが、サンパウロの決勝ですぐさま取り返す順応力を披露する
2戦続けて不運に遭遇した王者スコット・マクラフランは、レース3で驚異の追い上げを見せ2位に
この第8戦で最多ポール記録を単独の7まで伸ばしたアントン・デ・パスカーレは、ランキングでも4位に着けている

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