「新型コロナウイルス感染症:拡大防止活動基金」、国内クラウドファンディング史上最高額に

国内最大手のクラウドファンディング事業者「レディーフォー」は28日、同社サイトで募集されていた「新型コロナウイルス感染症:拡大防止活動基金」が開始から55日で5億円2000万円の寄附金を集め、国内クラウドファンディング史上最高額を達成したと発表した。この基金は国の感染症対策に提言する立場の医師など多くの専門家が関わっているファンドで、すでに基金のうち約1億2千万円が16団体に助成金として給付され、各団体の新型コロナ対策を支援している。

専門家会議のメンバーなど13名の専門家が諮問会で採択

4月3日に募集開始となったこの基金の特徴は、支援先の団体を審査する諮問会のメンバーが、まさにいま新型コロナ対策の最前線にいる専門家ばかりであることだ。政府の専門家会議に名を連ねる賀来満夫氏(東北医科薬科大学医学部特任教授)や「8割おじさん」こと西浦博氏(北海道大学大学院医学研究院衛生学教室教授)、厚生労働省の顧問としてLINE経由の国民調査を実現した宮田裕章氏(慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室教授)など、現実に様々な施策に関わったり、臨床で患者に対応している医療従事者が名を連ねている。彼らが透明性のある審査を行い、さらにレディーフォー上の基金のページで、採択された各団体の活動状況が確認できるようになっている。

この諮問会のメンバーには、当メディアのコラムニストである在宅医療のフロントランナーのひとり、佐々木淳氏(医療法人社団悠翔会理事長・診療部長)も入っており、審査を通じて課題解決に協力してきた。今回基金について、以下のコメントをいただいた。

「これはある意味、新しい民主主義の形」

新型コロナ拡大防止活動基金、クラファン国内史上最高額5億3千万円を超えるご寄付をいただいています。
みなさまのご協力とご支援の心から感謝申し上げるとともに、透明性の高い助成先選定・迅速な資金提供に引き続き取り組んでまいります。

昨夜は、「新型コロナウイルス最前線、いま必要な支援とは」というテーマで、厚労省クラスター斑でも活躍される東北大学の小坂教授、メンタルヘルスや社会心理的支援に詳しい宮崎大学の原田教授、READYFOR株式会社の米良さんとともに、オンラインセミナーに登壇させていただきました。

緊急事態宣言の数日前に創設されたこの基金は、その後2週間で、第一期の助成を実行しました。新型コロナ感染者の診断や治療にあたる急性期医療や地域医療の現場で、枯渇していたサージカルマスクを中心に、感染防御資材の確保や国内開発生産を目的とした事業が主な支援対象となりました。
その後、急性期医療の現場では政府のマスク班などからも資材の提供が行われる体制が徐々に整い、一部を除き資材不足は徐々に解消されつつあります。

オンラインセミナーのタイトルにある「最前線」。多くの人は急性期医療の現場を想像されると思いますが、新型コロナに感染し、重症化し、生命維持治療が実施されるというのは、実は新型コロナとの戦いの最後の砦。一番大切なのは、重症化しやすい人たちを感染から守ること、その人たちの暮すコミュニティで感染拡大させないこと、そして、もし感染したとしても、状況に応じて入院以外の選択肢が確保できること。新型コロナとの戦いの最前線は、病院の外の「地域」にあり、そしてそれを担うのは、医療だけではない介護や福祉の専門職、そしてボランティアたち。
そのような認識に基づき、第二期の助成は、主に地域で高齢者や障害者などのケアの現場、そしてワーキングプアや外国人、こどもたちなど、既存の支援の枠ではカバーしきれない人たちに対する支援を行っている団体を対象に実施されました。

そのような状況において、とりあえず第一波は収束しました。しかし、完全な終息ではなく、いずれ第二波がやってくることが予想されます。感染症への対応は引き続き必要になります。
また、感染拡大を防ぐための社会活動の抑制は、私たちの生活に大きな影響を与えています。収入面、社会とのかかわり、そして生活の継続・・・
第三期以降は、感染防御や新型コロナによって大きな影響を受けている人たちを支援する取り組みに加え、新型コロナと共存する新しい社会に最適化するための新しいチャレンジも支援の対象として考えるべきかのかもしれません。

新型コロナの感染拡大のフェイズ、社会状況の変化に応じて、基金に求められる役割も変化しつつあることを感じます。
しかし、いずれにしても、行政が担いきれない「公」を、能力と意欲にある市民が担う、そしてその活動を支援する税金以外の財源に市民が自ら出資する、これはある意味、新しい民主主義の形なのではないかとも感じ始めています。

ウィズコロナ、アフターコロナ、そしてその手前であと数回はやってくるであろう感染拡大の波。この複雑な時代を、みんなにとって安心できる、納得できるものにするために、与えていただいた役割をしっかりと果たしていきたいと思います。

これまでにご支援をいただいたみなさまには心から御礼申し上げるとともに、引き続きのご支援・ご協力をよろしくお願い申し上げます。
また、新しい社会に向けて新しいチャレンジを計画している方も、ぜひ助成にご応募ください。

 

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