第二の「木村花さん」が現れても不思議じゃない 『テラハ』をはじめとする恋愛リアリティショー出演者が受ける罵詈雑言

写真はイメージです。

“ドキュメンタリー系リアリティ番組”を謳う『TERRACE HOUSE TOKYO 2019-2020』(フジテレビ系/Netflix)出演者の木村花さん(享年22)急逝の報から4日後の5月27日、フジテレビが同番組の製作中止を発表しました。

木村さんは自殺を図ったとされています。要因の一つに、放送を見た視聴者からの誹謗中傷が自身のSNSに書き込まれ続けたことが挙げられ、当初、世論は“ネット中傷”に対する怒りで満ち溢れていました。きゃりーぱみゅぱみゅさんさんが自身のツイッターで「誹謗中傷を気にするななんて難しいよ。芸能人だって1人の人間だよ忘れないで」と発信したほか、多くの芸能人が“ネット中傷”に声を上げました。

そうした問題点はワイドショー等でも扱われましたが、数日のうちに一転、番組制作側の問題点を指摘する声が急増。

たとえば。

有名人が指摘した番組制作の問題点

25日放送の『バラいろダンディ』(TOKYO MX)で、武井壮さんが「彼女が出ていたシーンを実際に見ると、結構きつい口調で共演者を責め立てているシーンがあって。それが視聴者の反感を買ってしまって」「僕が映像を見ても嫌悪感を覚えるシーンだったのは確かで。明らかに演者が『愛されることはない』と思われるシーンはカットして。そういう配慮が必要だと思う」と話しました。

乙武洋匡さんも同日に自身のツイッターで、「各局ワイドショーが『SNSでの誹謗中傷よくない』という論調で放送しているようだが、『今週の標的はコイツですよ』と指令塔の役割を果たしてきたのは、どこの誰だよ」「すべての責任をネット民に転嫁し、自分たちは反省の色なし」と批判。

26日放送の『グッド! モーニング』(テレビ朝日系)では、中尾彬さんが「台本はないが、面白い場面ばかり編集しているため、以前からSNS上で誹謗中傷が書き込まれていると聞いている」「都合のいいところだけ切り取って、なぜフォローしなかったのか。テレビ局が守ってやらなきゃいけなかった」と熱弁。

27日放送の『Live News α』(フジテレビ系)では、三田友梨佳アナが「番組の打ち切りで終わらせるのではなくて、何があったのか、防ぐことはきなかったのか、木村さんがどれだけ辛い思いをされていたのか、しっかりと受け止め、検証していくことが、私たちがすべきこと」と、制作局所属アナウンサーとして責任ある発信をしました。

そして同日、国際政治学者の舛添要一さんが自身のツイッターに「テレビ制作側の問題もある」「出演者も制作者の意に沿わないと使ってもらえない。気配りをする若者にとっては酷で、才能が潰されていく」と投稿。

28日放送の『とくダネ!』(フジテレビ系)でも国際政治学者の三浦瑠麗さんが「仮に、編集のやり方が現実で起きていたことと違って見えたとしても、そのほうが注目を集める。そっちのほうがテンポよく番組が進むってなった時に、どんな影響が起きるのかというのを予測せずに、出演者がすべてその人のせいでもないのに受けてしまうという構造があると思う」と指摘。

極めつけは、27日配信のNEWSポストセブンのこんな記事でした。

<テラハの暴走、現役スタッフが告白 泥臭い人間模様を狙う>

記事では元スタッフが、台本はないが<ストーリーはこちらで作って>いたことや、撮影前に出演者に対して恋愛の方向性を指示していたこと、制作側の意に沿わないと何テイクも撮り直していたことを明かしています。さらに現役スタッフが、怒鳴り合いを指示したことや、具体的に<昨年のある放送回では、嫉妬を映像で見せる演出に花さんを使いました。1人の男性を奪い合う形で、露骨に女性同士が目の前でアプローチをして嫉妬をさせ合うんです>と、“演出”の存在を匂わせたのです。

同記事は反響を呼び、ツイッターには番組に対する批判をはじめ、攻撃的で過激な文言が並びました。

「殺人番組」「テレビ局の『炎上商法』これを取り締まるのが先だ!」「山里もそうだし、徳井もなんかインスタで中傷されてる人SNSから逃げて下さいとか言って、自分らの番組の責任は無視してた。そもそも番組が悪いだろって話」「ネットユーザーに責任を押し付けるいつものパターン。1番卑怯なのはTV局」「フジテレビと企画立案者と撮影責任者は自分たちが殺したとわかってんのか?」「ネットで人殺しの仕方を学ばせた番組ということですね」

しかし、この記事に対して同番組の出演者が反論します。

TERRACE HOUSEの出演者が反論

木村さんと数ヶ月間を共にし、口論や励まし合いをしたりなど、深い関わりを持っていた水越愛華さんが、自身のインスタグラムのストーリーに、上記記事を読んだことを報告。

「私が実際に体験した事実と異なる内容が多く書かれていて驚いています」「私も、編集には怒りや悲しみを感じる事は沢山ありましたが、あのニュースに書いてあることを鵜呑みにしないでほしいです」

と、同記事が事実として拡散されることに危惧を覚えたようでした。

さらに、同じく木村さんと共演した新野俊之氏も自身のツイッターで

「『事実』が大事だと思うからコメントするけど、俺は何も指示されてないよ、忖度なしで。編集にはムカついてたけどな」と、率直にコメント。

これに対し、ツイッターでは「実名を公表している出演者の話を信じる」などといった大きな反響を呼びました。

様々な要因やそれぞれの立場による思惑が絡み合い、白か黒かでは論じられないこの事件ですが、出演者たちの言葉ほど、深く突き刺さるものはありません。

恋愛リアリティショー出演者に浴びせられる罵詈雑言

「海外のリアリティ番組の出演者からは、多くの自殺者が出ています。にもかかわらず、“恋愛リアリティ番組”というジャンルは一向に消滅しません。今回も、“元凶のテラスハウスが責任をとって打ち切っておしまい”という単純な構造ではない気がします。他のリアリティ番組だって、これまで“最悪の結果”を招かなかっただけで、同じように凄まじい誹謗中傷を受けた出演者がいることは、忘れてはなりません」(芸能記者)

そんなひとり、“恋愛リアリティの婚活サバイバル番組”を謳う『バチェラー・ジャパン シーズン3』(Amazonプライム)出演者の岩間恵さんは、自身のツイッターにこんな胸の内を綴っています。

「木村花さんの件は、他人事とは思えず、衝撃を受けました」
「私も多くの方から意見を頂きました。不快な思いをさせた事は確かなのである程度覚悟はしていたものの、直接送られてくる誹謗中傷に疲弊する時もありました。支えてくれる人達が居たから乗り越えられましたが、私たちが普通に活動し始めると『メンタルが強い』と揶揄され、執拗に攻撃してくる人もいます」

このツイートとともに、岩間さんに届いたと思われる罵詈雑言のスクショを公開。そこには、

<頭いかれてる? きもすぎ!> <心底軽蔑するわ。どんな育てられ方したら、こんな下品な女のなるん?><ゴミ> <クズ> <アバズレ尻軽> <人間として生きる価値なし> <マジ、死ねよ> <万が一結婚しても離婚するだろうな。2人とも未熟すぎ。万が一離婚しなくても不妊に悩め。サイコパスな両親の間の子供がかわいそう。世の中の全ての不幸があなたがた2人に注がれますように。頼むから消えてくれ> <ねえ、心中したら? こんだけ嫌われてたら生きづらいでしょ> <おまえ1人のせいでみんな不愉快。消えろ> <2人揃って事故死してくれないかな。別れたってヤフーニュースは予測範囲すぎて大白身にかけるので、死去っていうニュースが>

など、岩間さんが無事に生きていてくれてよかったと安堵するほどの、正気の沙汰ではない憎悪が渦巻いています。

岩間さんは、こう綴ります。

「ネットで本人に直接誹謗中傷するのは言語道断だと思います。もっとネットを使う人全員が当事者意識を持って見直されるべきだとも思います。一方で、リアリティショーに出演した『自己責任』という言葉をいいことに、その後のリアルの生活まで脅かされるほどの作品にしてしまう側にも責任があると思う」

「切り取りかたひとつで、視聴者には全く別の人格に映る。番組の見せ場をつくらなきゃならない、面白くしなきゃいけない、というのも理解できるけど、私たちは「出演者」や「役」としてでなく、映っているものが「私」の全てとして視聴者に見られてしまうから」

ここから伝えたいことを汲み取り理解することが、単に番組を批判するより先に我々がやるべきことかもしれません。(文◎じゅる王)

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