メクル第462号 警察官 石川鮎さん 笑顔で地域に寄り添う

常に2人1組で乗車します。先輩に学ぶ毎日です

 地域(ちいき)の治安を守り、みんなが安心安全な生活を送れるようにするのが警察(けいさつ)官。住民の模範(もはん)となるような行動が求められます。長崎県警察には警察本部と22の警察署(しょ)、200の交番・駐在所(ちゅうざいしょ)があります。警察官は約3千人。そのうち女性(じょせい)は約250人います。

 ★女性(じょせい)の存在(そんざい) 重要

 小学2年から剣道(けんどう)をしていて、周りに指導者(しどうしゃ)などとして警察官の人が多くいました。将来(しょうらい)を考え始めたとき、自然と「警察官になりたい」と思いました。「地域の役に立ちたい」という気持ちが芽生えました。
 高校を卒業する時に受けた試験は失敗。夢(ゆめ)を諦(あきら)めきれず、大学卒業時にも受けましたが、再(ふたた)び不合格(ふごうかく)。専門(せんもん)学校に1年間通い、3度目の挑戦(ちょうせん)で合格した時は涙(なみだ)が出ました。
 まずは警察学校で、法律(ほうりつ)の勉強や武道(ぶどう)、体力アップなどに取り組みました。計8カ月間の厳(きび)しい訓練。7カ月間の交番実習では、現場(げんば)の基礎(きそ)を学びました。昨年7月、晴れて一人の警察官としてスタートを切りました。
 最初は実習と同じ、佐世保(させぼ)市の早岐(はいき)警察署の交番に勤務(きんむ)。警察官には男性が多く、「男性には負けたくない」と思っていました。
 ただ、夫婦(ふうふ)や恋人(こいびと)間で暴力(ぼうりょく)を振(ふ)るうドメスティックバイオレンス(DV)や、つきまといや嫌(いや)がらせを繰(く)り返(かえ)したりするストーカー被害(ひがい)など、女性に関する犯罪(はんざい)に対応(たいおう)することも多い。被害者の女性には女性警察官が話を聞いた方が相手にも負担(ふたん)が少ないと感じ、女性の存在(そんざい)も重要なんだと気付きました。

剣道4段の石川さん(左)。昨年は県警の剣道大会女子個人で優勝しました(長崎県警提供)

 ★未然(みぜん)に犯罪(はんざい)防(ふせ)ぐ

 今年春から、警察本部の自動車警ら隊、通称(つうしょう)「自(じ)ら隊(たい)」に配属(はいぞく)されました。24時間365日、警察署の担当(たんとう)区域の枠(わく)を越(こ)えてパトカーで巡回(じゅんかい)します。事件(じけん)現場に真っ先に駆(か)け付(つ)ける初動捜査(そうさ)の大事な部隊です。
 自ら隊は長崎市にある本隊と県北(佐世保市)県央(大村市)の3カ所に拠点(きょてん)があり、パトカー16台、隊員80人が所属。女性はわずか3人です。不審者(ふしんしゃ)らに職務質問(しょくむしつもん)(以下職質(しょくしつ))をするプロ集団(しゅうだん)なので、自分にできるか不安でした。
 私(わたし)がいる本隊は、長崎市のほか西(にし)彼杵(そのぎ)郡時津(とぎつ)町、長与(ながよ)町、西海市、島原半島を担当。パトロールは2人一組で行います。街中を走りながら、常(つね)に目を光らせています。
 職質では気性(きしょう)の荒(あら)い人や酔(よ)っぱらいにも声を掛(か)け、罵倒(ばとう)されることも。それでも、ちゃんと話を聞き出さなければいけないので難(むずか)しい。先輩(せんぱい)の姿(すがた)を見ながら、試行錯誤(しこうさくご)の毎日です。
 2006年4月に発足して15年目の自ら隊。警察官には刑事(けいじ)や鑑識(かんしき)、白バイなど業務(ぎょうむ)は多いですが、自ら隊は犯罪(はんざい)が起きてからではなく、起きる前に見つけ出して防(ふせ)ぐ部隊でもあります。警察がやるべき本来の姿だと思っています。

パトロール出発前の車の点検も大事な仕事です

 ★大切な言葉掛(ことばか)け

 交番勤務の際、初の取り調べは万引をした人でした。まずは相手の話を聞く姿勢(しせい)で臨(のぞ)むと、自然と話してくれました。後日、その人が「石川さんに世話になった。今は家族と元気にやっている」とメッセージをくれました。感謝(かんしゃ)は被害者からされるものだと思っていましたが、掛(か)ける言葉(ことば)によって罪(つみ)を犯(おか)した人の人生も変わるんだと実感しました。その時感じた言葉掛けの大切さは、今の自ら隊でも、どこの部署(ぶしょ)に行っても同じだと思っています。
 警察官としてまだ3年目。でも「女性にしかできない、自分にしかできないことがある」との使命感を強く持っています。あいさつや笑顔も大事にして、地域に寄(よ)り添(そ)う警察官として歩んでいきたいです。

「笑顔で地域に寄り添う警察官になりたい」と話す石川さん=長崎市田中町、自動車警ら隊本隊

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