マスク着用「常態化」のなか、どうなる化粧品消費 資生堂の決算と今後の見通し

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世界で化粧品を販売する資生堂は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で業績が悪化している。第1四半期となる2020年1~3月期連結決算は純利益が前年同期比95.8%減と赤字すれすれとなり、通期の業績予想を取り下げた。主力の国内市場でインバウンド需要が蒸発したほか、テレワーク拡大や外出自粛で口紅が売れないといった事態にも直面している。

今後の化粧品購買行動の変化にも注目が集まる

第1四半期の売上高は前年同期比17.1%減の2268億円、営業利益は83.3%減の64億円、純利益は95.8%減の14億円だった。世界的な外出自粛を想定して世界でマーケティング(販売促進)費を減らすべきだったが、これが遅れたことが利益を押し下げたとしている。

訪日外国人旅行者の大幅な減少の影響

資生堂は事業を世界で展開しており、売上高ベースで見れば日本4割、中国2割、米州と欧州が各1割というイメージだ。この1~3月期、中国は売上高が12.0%減(現地通貨ベース、以下同)と影響を受けたものの、「3月後半には9割以上の小売店が営業を再開し、回復の兆しが見られる」としている。「巣ごもり消費」によって中国向け通販は「大幅成長」だった。ただ、世界で需要が蒸発するなか、いまだ成長力を秘める中国では仏ロレアル、米エスティ・ローダーといった世界のメジャーな化粧品会社との競争が激しくなっているとの指摘もある。

米州、欧州は3月に都市封鎖や外出制限が本格化し、売上高は米州が14.6%減、欧州が14.9%減だった。営業損益は米欧とも赤字幅が前年同期より拡大。中国と違って米欧は4月以降の回復を見通しがたい。

主力の日本もなかなか厳しい。小売店の営業時間短縮や休業、訪日外国人旅行者の大幅な減少によって売上高は21.2%減の857億円。小売店と言ってもドラッグストアは開いているのだが、主に百貨店の1階フロアで対面販売する高級品が売りたくても売れなくなったことが大きい。すでに春節期間中も渡航制限がかかり、中国を中心にした訪日外国人が減っていたが、日を追うにつれてゼロに近づいていき、インバウンド需要がほぼ消滅してしまったことも痛手だ。緊急事態宣言の全国的な解除で百貨店自体は再開しつつあるが、顧客の肌に触れる対面販売の早期の全面再開は困難との見方がある。2020年のインバウンドについては、もはや19年のような状況は期待できないだろう。

「ニュートラルシナリオ」と「ワーストシナリオ」

さらに、テレワークの拡大や外出自粛が化粧品需要にも影響している。総務省が発表した3月の家計調査(消費支出)によると、前年同月比の実質増減率で乳液は28.6%減、口紅が22%減と、ただごとではない落ち込みだ。半面、手洗い需要を取り込んだ浴用・洗顔石けんは15%増だった。

こうした状況のもとで資生堂は「経済活動の再開タイミングなど不確定要素が多い」として2月に発表した2020年12月期の通期業績予想(売上高が前期比7.8%増、純利益は5.4%増など)を取り下げ、再精査のうえ8月の中間決算発表時に改めて公表するとした。配当予想も同様に取り下げた。

さらに資生堂は今後、「ニュートラルシナリオ」で2021年、「ワーストシナリオ」で2023年にコロナの影響から回復するとの2つのシナリオを想定し、コスト削減などを徹底し構造改革するとしている。ただ、「海外旅行や外出の機会減少、マスク着用が常態化するなか化粧品購買行動が中期的に変化する可能性が高く、世界で勝つための経営の舵取りは難しい局面が続く」(SMBC日興証券)との指摘も出ている。