120試合制の今季は「選手層の厚いチームが有利」!? 専門家が分析する鍵は…

巨人・原辰徳監督(左)とソフトバンク・工藤公康監督【写真:Getty Images、荒川祐史】

試合数が減っても巨大戦力を誇るチームが優勝に近い!? 解説者の野口寿浩氏が予想する理由は…

プロ野球は6月19日に開幕することが決まった。今年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で3月にシーズンをスタートすることができず、交流戦やオールスターもすでに中止が決定。通常よりも23試合少ない120試合制のペナントレースで各球団が頂点を目指すことになる。

前例のないシーズンで、いったい何が鍵となるのか。ヤクルト、日本ハム、阪神、横浜の4球団で捕手としてプレーし、2018年までヤクルトで2年間、バッテリコーチを務めた野球解説者の野口寿浩氏は、選手層の厚いチームが有利になると予想する。試合数が減っても、巨大戦力を誇る球団が優勝に近いと考える理由とは……。

まずは、従来より約3か月も遅い開幕になる今季について、野口氏は「選手にとって本当に難しいと思う」と語る。1度はキャンプを行い、無観客ながらオープン戦も開催されていたとはいえ、チーム活動も一時休止されたなかでの調整は困難を極めたはず。常々、怪我などでキャンプを順調に過ごせなかった選手は、シーズンをフルに戦う体力づくりができていないと話している野口氏。今年は全員が同じような状態になっている可能性もある。

「普通なら2月に1か月キャンプして、すぐにオープン戦に入って、すぐにシーズンが開幕します。(今年も)キャンプ、オープン戦まではやりましたけど、これだけ間隔があいてしまったら、もう1回キャンプをやりたいぐらいの選手もいるでしょう。調整はものすごく難しい。

今年に関しては、全員が春季キャンプをほとんどやらずに開幕を迎えるような形になってしまった。どれだけ自粛期間中に自分でトレーニングできていたかによりますが、そもそも練習をやっていいのかどうかというところもあった問題なので、すごく難しいとは思います。体力的なものは確実に落ちているでしょう。120試合のシーズンでも、100試合くらいでへばってしまう選手が出てくるのではないでしょうか」

調整の難しさや過密日程を考慮すると…「やはり層の厚いチームが断然有利」

2011年には、東北地方に甚大な被害をもたらした東日本大震災が3月11日に発生し、プロ野球の開幕が約3週間遅れた。当時から現役だった選手もまだ多くいるが、今年とはまた状況が違う。野口氏は「前例がないので、本当に難しい。東日本大震災のときも、こんなには(開幕までの期間が)空きませんでしたから。しかも、あの年は練習はできていたので。今年に関しては、選手はどう調整していいかがわからなかったと思います」とも話す。

「全員が同じ条件なので、そういう意味では不公平感はありませんが、みんながみんな揃って1年間もたないということになるかもしれません。そうなってくると、手持ちの駒が多いチームが有利になってくるとは思います」

試合数が少なくなれば、中心選手だけでシーズンを乗り切れそうとも考えがちだが、開幕前の調整の難しさを考えると、むしろ今季は層が厚いチームのほうが有利だというのだ。しかも、短い期間で120試合をこなさなければいけないため、過密日程も予想される。タフさが求められるシーズンになることは間違いない。

「ずっと6連戦が続いていくことになります。しかも、例年のシーズンにはあるはずのオールスターブレークや、交流戦終わりの休みもない。ずっと6連戦でいって、休めるのは雨で中止になった日や移動日になる。ただ、中止になったらダブルヘッダーが入ってくる可能性もありますし、予備日にその試合が入れば連戦がさらに伸びることになる。選手の疲労度はいつものシーズンよりも蓄積しやすいのかなと」

実際に、過密日程を考慮して登録枠を増やすという案も出ているという。

「連戦を考えると、投手については先発の枚数が多いチームの方が有利ですよね。休ませながら、という形ができるほうがいい。さらに、もしベンチの枠が拡大するなら、ピッチャーを増やすチームが多いはずです。6連戦、6連戦となるとリリーフが増える。数を入れたほうがいいとなりますから。

そういったことを考えていくと、やはり層の厚いチームが断然有利ですよね。3月末とか4月の頭に開幕する中での120試合なら選手の数は多くなくていいかもしれませんが、期間凝縮の中での120試合なら選手層が問われることになります」

練習試合は行われるものの、短い準備期間を経て、開幕を迎えることになる2020年のペナントレース。いったいどんなドラマが待っているのだろうか。(Full-Count編集部)

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