「配球を丸々覚えている」フジ中村光宏アナが衝撃受けた阿部慎之助&小林誠司の対談

フジテレビ「S-PARK」などを担当する中村光宏アナウンサー【写真提供:フジテレビ】

高橋由伸氏の東京六大学リーグ新記録となる本塁打をスタンドで見ていた中村少年

【野球を好きになった日22】
本来ならば大好きな野球にファンも選手も没頭しているはずだった。しかし、新型コロナウイルス感染拡大防止のため各カテゴリーで開幕の延期や大会の中止が相次ぎ、見られない日々が続く。Full-Countでは選手や文化人、タレントら野球を心から愛し、一日でも早く蔓延する新型コロナウイルス感染の事態の収束を願う方々を取材し、野球愛、原点の思い出をファンの皆さんと共感してもらう企画をスタート。「私が野球を好きになった日」の第22回は、フジテレビでスポーツニュース番組「S-PARK」などを担当するフジテレビ中村光宏アナウンサーだ。

プロ野球をはじめ様々なスポーツを広く取材、実況し、2018年4月からは「S-PARK」のメインキャスターとなった中村アナにとって野球は身近な存在だった。物心がついた時には、その手にボールとグローブがあり「父親との遊びといえばキャッチボールの記憶しかないです」。父と祖父の影響で自宅のテレビに映るのは巨人戦。「夜は大相撲を見て、その後は野球を見るというのが日常でした。4番だった原辰徳さんがいつもホームランを打っていた記憶があります」。子供の頃は野球が日常だった。

とはいえ、野球を本格的に始めたのは中学生になってから。小学生の時は発足したばかりのJリーグのブームに乗って地域のサッカーチームへ入った。それでも「『MAJOR』とか『タッチ』『H2』などの野球漫画を見て、やっぱり野球は面白そうだな、と」。中学生になって一転、野球部へ。当時は二塁手。現在TBSに勤める井上貴博アナウンサーと二遊間を組んでおり「井上は小学校のときから天才野球少年と呼ばれていました。足も速く、肩も強い。守備も抜群に上手い。でもヒットは僕の方が打っていた気がします(笑)」と当時を振り返る。

この中学生の頃に中村アナは大きな“出会い”をする。1年生の頃に初めて見に行った東京六大学野球。慶応大の4番を打っていたのが高橋由伸氏だった。たまたま観戦した試合で高橋氏はリーグ新記録を打ち立てる本塁打を打った。「スポーツってこんなに人を興奮させてくれるんだ、感動を与えてくれるんだと感じたのが、スポーツ選手に憧れたきっかけです」。湧き上がるスタンドに、中学1年生だった中村アナは大きな衝撃を受けたという。

この時に覚えた感動が就職活動をする時の志にも繋がった。「スポーツが好きだったので、もしアナウンサーになれたら、スポーツに関わりたいという思いはありました」。フジテレビ入社後はスポーツアナウンサーとして野球に限らず様々なスポーツの実況を担当し、2年前からは「S-PARK」のメインキャスターにも抜擢された。

フジテレビ「S-PARK」などを担当する中村光宏アナウンサー【写真提供:フジテレビ】

「捕手の方は1試合の配球、シーズン中の配球をほとんど覚えているんです」

これまでにプロ野球を取材し、最も驚かされたのが選手たちの“記憶力”。「捕手の方は1試合の配球を丸々覚えていて、かつシーズン中の配球もほとんど覚えているんです。(巨人の)阿部さんと小林選手の対談を2度ほど放送させていただいたのですが、阿部さんが『あの試合のあの打者の何球目、あのカウントで何であのボール投げたの?』と事細かく小林選手に聞いていました。それを聞いたときに、プロの方々の考え方は我々の想像を超えているんだなと思いました」。相手の打者やカウント、そして要求した球種。1球1球、ハッキリと覚えているのだ。

選手たちだからこそ感じられる微細な変化や感覚、その繊細さにも驚かされる。「お話を伺うと選手って本当に深く様々な事を考えているんです。もっと豪快なイメージがありましたが、思っている以上に微調整しているし、繊細ですね。練習を見ていてもルーティンを崩さなかったり、感覚的なマイナーチェンジを繰り返していたり……。思った以上の緻密さ、繊細さに驚かされています」。奥深くプロ野球の世界に日々驚かされ、感動しているという。

だからこそ、スポーツを“伝える”仕事にもやり甲斐を覚える。画面を通した先にいる視聴者に楽しんで、喜んでもらえるようにと日々考えを巡らせる。「ファンの人たちはもっともっと選手に聞きたいことがあると思います。私たちは取材をする機会を与えていただけているので、そういったファンの方々の聞きたいことを、選手の方に教えていただいて、皆さんに繋げられたらと思って日々取材しています」。

新型コロナウイルスの感染拡大でプロ野球は開幕が延期となっており、他のスポーツでも延期や大会の中止などが相次いでいる。当然、中村アナの日常も激変した。「スポーツがあることが当たり前という感覚でこれまでありましたが、スポーツがあるというありがたみを改めて感じたという事が大きいです」。スポーツがあることがどれだけ恵まれていたことなのか。今回の未曾有の事態でそう痛感させられた。

「今はワクワクを溜める時間だと思っています。我慢しているからこそ、再開された時の楽しみ、喜びは大きくなると思います。スポーツが、野球が再開される日を楽しみに、ワクワクを溜めながらその日を待ちましょう。そして、その日が早く来るように私たちができることをやっていきましょう」と呼びかけた中村アナ。球音が戻ってくるその時を待ち望んでいる。

中村光宏(なかむら・みつひろ)
1984年8月28日、東京都生まれ。慶応義塾大学を卒業後、2007年にフジテレビに入社。2018年からスポーツニュース番組「S-PARK」(土曜24時35分~、日曜23時15分~)を担当。現場に出てさまざまな競技にふれ、多くのアスリートに話を聞くなど取材者としても積極的に活動している。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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