新型コロナウイルス感染症 長崎県 1~5月の軌跡<1>

 昨年末の中国・武漢での発生を機に、全世界を瞬く間に襲った新型コロナウイルス感染症。長崎県も感染から免れることはできず、緊急事態宣言下の外出自粛、休校、休業など県民はかつてない不自由な生活を強いられ、経済は大打撃をこうむった。さらに長崎港に停泊していたクルーズ船で149人の集団感染が発生。県を中心に数々の難しい対応を迫られた。1~5月の長崎県の軌跡を振り返った。

新型コロナウイルスをめぐる長崎県内の動き

◎ランタンフェス
 1月24日、長崎の冬の風物詩「長崎ランタンフェスティバル」が開幕した。中国の旧正月を祝う「春節祭」に由来し、約1万5千個のランタンやオブジェが長崎市中心部を彩った。
 例年、中国人観光客でにぎわうが、今年は様相が違った。中国・武漢を中心に新型コロナの感染が拡大。中国政府は27日、海外への団体旅行などを停止。中国発着のクルーズ船の長崎寄港が突如中止になった。同フェス会場周辺では中国人観光客はほとんどみられなかった。
 「早く収束してほしい」。観光・経済関係者から影響を心配する声が上がり、実際、ホテルの団体客キャンセルや中国からの修学旅行中止などが相次いだ。ただ1月中は国内感染者は県外の数例にとどまり、県内では感染の有無を調べる検査態勢がようやく整いつつある状況だった。
 そんな中、クルーズ船コスタ・アトランチカ(イタリア船籍、8万6千トン)が29日、長崎に寄港した。

集客が前年比約42万人減の約56万人に落ち込んだ長崎ランタンフェスティバル=1月28日、長崎市新地町

◎一斉臨時休校
 全国各地でじわりと感染が拡大。2月に入り県内でもイベントが中止や延期となるなど影響が徐々に広がり始めたが、感染者はまだ一人もいなかった。
 しかし政府は28日、感染拡大防止で全国に一斉休校を要請。県内も3月2日を皮切りに、小中学校や高校などが原則、春休み前の24日まで臨時休校となった。
 突然の決定に社会は混乱。学校は保護者への連絡や在宅学習の準備を急ぎ、仕事をしている保護者は子どもの預け先探しに奔走。学童保育は指導員の確保に追われた。小6、中3、高3の児童生徒は卒業前の別れを惜しむ時間を突然奪われ、学校給食の食材も行き場を失った。一方で、保護者の昼食作りの負担を減らそうと弁当を無償や安価で提供したり、1人で自宅にいる子どもが寂しい思いをしないよう居場所を作ったりする動きが広がった。

一斉休校となり、午前中から多くの児童を預かる学童保育=3月4日、長崎市高城台1丁目

◎17人感染
 3月14日、壱岐市で県内初の感染者が確認された。2日前に京都府から転入してきたばかりの自営業30代男性だった。25日には英国への短期留学から帰国した西彼長与町の20代男子大学生も感染。4月1日には佐世保市の無職70代男性、諫早市の医療職60代女性、壱岐市の市職員30代女性の感染が判明した。
 その後、壱岐市で無職高齢の2人と介護職1人の計3人の女性が相次いで感染。3人と市職員30代女性の計4人は介護関係の業務で同席していたことが明らかになった。感染が市内で広がらないか市民の不安が高まったが、その後は1人の感染でとどまった。
 一方、諫早市の医療職60代女性が勤める医療機関は自ら施設名を公表した。自分が通院する施設ではないと安心する人もいたが、この医療機関には苦情や困惑の声なども殺到し、対応の難しさが浮き彫りになった。
 4月17日までに壱岐6人、佐世保6人、諫早2人、長崎1人、松浦1人、長与1人の計17人の感染が確認された。その後、県内で感染者は出ていないが、23日に佐世保市の無職70代男性が死亡した。
 県によると、現在、感染の有無を調べる検査は行政機関と医療機関計15カ所で1日最大約340件が可能。年内に23カ所で約1600件まで拡充することを目指している。車に乗ったまま検体を採取するドライブスルー方式の「地域外来・検査センター」は長崎、県央、佐世保の県内3カ所に設置。流行拡大に備え、現在確保している受け入れ病床102床を、当面約900床まで増やす方針。軽症者らが療養する宿泊施設の選定や、中等症者を中心に受け入れる「重点医療機関」の指定に向けた調整も進めている。


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