アメリカで暴動とデモが拡大…その背景をオバマの言葉で読み解く

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催涙ガスがまかれたミネアポリス(5月30日、写真:AP/アフロ)

アメリカ各地で暴動やデモが止まらない。土曜日の段階で、少なくとも26の都市に夜間外出禁止令が出され、デモの数は数えきれないほどになっている。

ミネソタ州ミネアポリスでは警察署が襲われ、火が放たれた。警官はすでに避難していたが、治安の悪さから消防隊は消火活動ができなかった。知事が州兵500名を動員するも暴徒を止められず、陸軍の憲兵に出動要請が出された。夜間外出禁止令が発令されているが、夜間でもデモは続いている。

アトランタでは、デモのスタート地点そばにあったCNN本社などがガラスを割られた。アトランタのあるジョージア州も非常事態宣言を出し、州兵を動員している。ポートランドやロサンゼルスでも警察署に火が放たれ、フロリダではデモ隊にピックアップトラックが突っ込み、暴動や強奪が起きた。サンフランシスコではデモがベイブリッジを通行止めにした。

事の発端は、5月25日、ミネアポリスで起きた。ニセの20ドル札が使われたと通報を受けた警官が、路上でジョージ・フロイドさんを捕らえ、手錠したまま、地面でうつ伏せにした。首を警官の膝で押さえつけられ、「息ができない」と叫ぶも無視。合計8分46秒も首を抑えつけられ、フロイドさんは死亡した。

この一部始終が通行人によりビデオ撮影されており、動画が拡散。警官は即座に解雇され、殺人の疑いで逮捕・起訴されたが、白人警官が黒人を残酷に殺したことへの怒りで、抗議デモが広がり続けた。デモは、カナダやヨーロッパなど海外にまで及んでいる。

事件は確かに痛ましいが、ここまで騒動が広がった理由はなにか。
黒人は警官から暴力を受けやすい。白人と黒人が同じ罪で捕まっても、黒人の禁固刑の期間は20%ほど長い。こうしたアメリカに根付く人種差別とコロナ禍のストレスなど、さまざまな要因が混ざって爆発している感じだ。

暴動の背景が、オバマ元大統領のツイッターからも見て取れる。オバマ元大統領は5月29日、「ジョージ・フロイドの死に関する声明文」を掲載した。

「パンデミックと経済危機のいま、『通常(ノーマル)の状態に戻りたい』と思うのは当然のことだ。しかし、多くの人が人種を理由に、悲劇的で痛ましい扱いを受けることが『ノーマル』になっている。ただ街中をジョギングしたり、バードウォッチングしているだけなのに。2020年にこれがノーマルであってはならない。我々が、ともに新しいノーマルをつくりあげていくのだ」という主旨である。

ジョギングというのは、25歳の黒人男性がジョギング中、2人の白人親子に銃で撃たれ死亡した事件。証拠ビデオがありながら、2カ月以上も親子は逮捕されなかった。もうひとつは、バードウォッチングしていた男性が、白人女性に犬をリードにつなぐよう注意したところ、逆上した女性が警察に電話し、「黒人」と連呼し、彼に罪を着せようとした事件。これもビデオが証拠として残り、女性は即解雇、犬も動物愛護団体に預けられることになった。

アメリカの人々は、コロナ禍の自宅待機中、こうした人種がらみの問題を自宅で見続けてきた。
もちろん人種差別問題は昔から続いているが、今回はトランプ大統領のツイッター上の発言も、火に油を注いだ。

トランプ大統領は、ツイッターで、暴動に対し「略奪が始まれば銃撃が始まる(when the looting starts, the shooting starts)」と武力行使を辞さない構えをみせた。実はこの表現、1960年代の公民権運動の取り締まりで使われた言葉と同じなのだ。多くのアメリカ人は、この言葉から強い黒人差別を連想する。実際、歌手のテイラー・スウィフトなどは猛烈に批判している。

この投稿に対し、ツイッター社は「暴力を賛美する内容」とし警告文をかぶせたが、怒りの収まらないデモ隊はホワイトハウスに押しかけた。

アメリカは、最初のデモから5回目の夜を迎えている。SNSでは、「PLEASE BE SAFE(どうか安全に)」という言葉がトレンドに入った。(取材・文/白戸京子)