コスタ・アトランチカ長崎出港 知事安堵「市中感染なし」

ゆっくりと岸壁を離れ、出港するクルーズ船コスタ・アトランチカ=31日午前11時49分、長崎市の三菱重工業長崎造船所香焼工場

 新型コロナウイルスの集団感染が発生したクルーズ船コスタ・アトランチカ(イタリア船籍・8万6千トン)が31日、停泊していた長崎市の三菱重工業長崎造船所香焼工場を離岸し、フィリピン・マニラに向けて出港した。中村法道知事は記者会見し、「市中感染もなく出港の日を迎え、ひとまず安心している。しっかりと課題の分析、対応策の検討を進め、今後に生かしたい」と述べた。
 同船は1月下旬に長崎に寄港し、2月下旬から3月下旬にかけて香焼工場で修繕。4月20日に1人目の感染が確認され、検査の結果、乗組員623人(当時)のうち計149人の陽性が判明。大半が船内で個室隔離された。2週間の経過観察期間を終えた陰性者と再検査で陰性となった計495人は空路で順次帰国。5月28日までに船内陽性者がゼロになった。
 31日は出港前、外国籍の20代女性乗組員がストレスによる体調不良で長崎市内の指定医療機関に搬送された。1人目の感染発覚からこれまでに陰性者を含め計11人が入院し、同日時点で6人が入院中。治療が終わり次第、帰国する。船の運営に従事する「エッセンシャルクルー」ら19カ国126人は同船に乗って長崎を出港。6月11日にマニラに到着予定という。
 一連の対応について知事は「(先に横浜で集団感染が発生したクルーズ船)ダイヤモンド・プリンセス(の感染症対策)を体験した専門家に指導、支援してもらい、比較的スムーズに対策が進んだ」と振り返り、医療支援に当たった長崎大や自衛隊、災害派遣医療チーム(DMAT)などの関係者に謝意を示した。
 今後の課題として「(船を長崎港で受け入れる際に)船内の健康状況を把握できる体制を組み立てる必要がある」とし、大規模な集団感染が発生した場合は「県境を越えた広域的な医療提供体制の構築が必要不可欠」とも述べた。今回の感染源の特定について中田勝己福祉保健部長は「専門家の見解をいただかないと評価は難しい。可能な限り解明に努める」と語った。

 


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