<社説>コロナ専門家会議 議事録の作成は不可欠だ

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 政府が、新型コロナウイルス対策を検討してきた専門家会議の議事録を作成していないことが分かった。公文書管理に対する安倍政権の姿勢は不誠実の一語に尽きる。コロナ禍で我慢を強いられている国民への背信行為でもある。 専門家会議は、政府の対策を考える上で医学的な観点から助言するために2月に設置された。感染症や公衆衛生の専門家、法律家らがメンバーで、感染状況の分析結果を示し、「3密」回避などの予防策を提言してきた。これまで14回開催され、全て非公開だ。

 現在、首相官邸のウェブサイトに第6回までの議事概要と資料は公開されている。だが出席者の誰がどのような発言をしたのかは分からない。

 会議の議論は政府のコロナ関連政策の根拠となり、自治体もそれに基づいて施策を推し進める。会議が例示した「新しい生活様式」なる提言は人々の暮らしや社会経済活動のあらゆる場面にも大きな変化をもたらしている。

 後手に回ったコロナの水際対策や検査態勢、首相が突如表明した一斉休校、感染が拡大してからの緊急事態宣言の発令や解除。未知のウイルスの拡大に政府がどう対応し、専門家の意見はどのように政策に反映されたのか。

 過程を検証し、教訓を後世に伝えるために議事録が不可欠であることは指摘するまでもない。国民への影響度や重要性を考えれば本来、会議は公開すべき性格のものだ。

 そもそも政府は3月、新型コロナに関して国家・社会として記録を共有すべき「歴史的緊急事態」に指定している。行政文書管理のガイドラインに基づく対応だ。

 歴史的緊急事態は民主党政権下で2011年の東日本大震災に関連する会議の議事録が未作成だった反省から、12年にガイドラインに盛り込まれた。野党だった自民党は「政権の隠蔽(いんぺい)体質だ」と未作成を批判した経緯がある。

 政府は今回、作成していないことについて、政策を決定したり了解したりする会議はガイドラインで議事録作成が義務付けられるが、専門家会議はこれに該当しない―と説明している。

 菅義偉官房長官は「率直に議論してもらうため、発信者は特定されない形で議事概要を作成し公表している」と述べた。だが会議のメンバーからは議事録を公開しないことに疑問の声が出ている。

 安倍政権では陸上自衛隊による国連平和維持活動の日報隠蔽や、森友学園を巡る財務省の決裁文書改ざん、桜を見る会の招待者名簿廃棄など、無責任でずさんな公文書管理が相次いでいる。今回もそれらに通底する問題だ。

 主権者である国民と正直に向き合って正しく情報を開示し、後世に謙虚な姿勢で詳細な記録を残すことは公務員として当然の仕事のはずだ。会議の録音やメモがあるのではないか。政府は議事録を作成すべきである。