テレワークが日本で「普通」の働き方に?社会に定着するのに必要なこと

新型コロナウイルス感染症対策として、多くの企業で在宅勤務が実施されるようになりました。緊急事態宣言は解除されつつありますが、日本経済団体連合会は5月14日、「オフィスにおける新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン」を公表し、緊急事態宣言が解除されても在宅勤務などのテレワークを推進することを盛り込んでいます。

新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために広まった在宅勤務が、これからも「普通」の働き方となりつつあります。今後、感染症対策が長期化する中で、新しい働き方としての在宅勤務が社会に定着するためには何が必要でしょうか。


在宅勤務の普及のために必要なこと

まず、在宅勤務が着実に増えていることが、図表1によってわかります。これは、厚生労働省がLINE株式会社の公式アカウントにおいて、サービス登録者に対して実施した「新型コロナ対策のための全国調査」の結果です。

この調査結果によると、オフィスワーク中心(事務・企画・開発など)で働いている人の在宅勤務などのテレワーク実施率は、第1回調査時点(3月30日―4月1日)では14.0%でしたが、第3回調査時点(4月12-13日)では全国平均が26.8%に増加しました。3月末から感染拡大の防止策として在宅勤務は着実に広がっており、全国的な緊急事態宣言発令後の実施率はさらに上昇していると考えられます。

ただし、第一生命経済研究所が緊急事態宣言発令直前の4月3日―4日に実施した調査により、従業員規模別に在宅勤務の実施割合をみますと、従業員規模が小さいほど在宅勤務の実施割合は低くなっています。

今後も感染症対策の長期化が見込まれる中、在宅勤務が可能であるにもかかわらず、制度や設備が整っていないために実施できていない企業に対し、在宅勤務が可能になるための支援が求められます。

自律的に働けても仕事がはかどらない

次に、新型コロナウイルス感染拡大によって在宅勤務をするようになった(することが増えた)人がどのような意識で働いているかをみてみましょう。

第一生命経済研究所が実施した調査によりますと、「会社の指示(拘束力)が強まった」よりも「自分の裁量で柔軟に働けるようになった」、「労働時間の管理が厳しくなった」よりも「自律的に働けるようになった」と回答した人の割合のほうが高いです。物理的に職場を離れて働いているということもあり、自律的に、自分の裁量で働けることを実感した人も少なくないようです。

他方、「職場の人とのコミュニケーションが減った」と回答した人が4割に上っています。この点、ニュースやワイドショーなどのテレビ番組でも導入されるなど、オンラインで会議や雑談などができるようなシステムが普及しましたので、これを活用してコミュニケーション不足の解消に取り組む企業が徐々に増えるかと思います。

この他、「仕事がはかどらなかった」「仕事のストレスが増えた」「意欲的に働けない」「仕事に集中できない」と回答した人の割合が、それぞれ反対の意味を示す回答をした人の割合を上回っています。今回、多くの学校が休校になり、子どもがいて仕事に集中できないという人も少なくないのかもしれません。

こうした特殊事情に合わせて、これまで在宅勤務をしたことがなかった人が急に強制的に在宅勤務をするようになって、どう働いていいかわからなくて、戸惑いながら在宅勤務をしているという気持ちが、この中に表れているように思います。自分の裁量で働けるようになったものの、やるべき仕事、役割、目標がはっきりとわからないまま在宅勤務をしている人が多いようです。

在宅勤務という働き方は、まだ多くの企業で始まったばかりです。これから在宅勤務を多くの人に定着させるためには、まずは、在宅勤務の可否で業務内容を分別し、在宅勤務が可能な業務については、積極的に在宅勤務ができるよう制度や設備を整えることが必要です。その上で、社員の能力や関心に合わせて役割分担や目標設定などをおこなうなど、社員が前向きに働けるようなマネジメントの工夫が必要です。

このようにして、在宅勤務においてもオフィス勤務と同様に、社員が意欲的に働くことができるようになれば、「働きやすさ」と「働きがい」を両立させる新しい働き方として広がることが期待できます。

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