集団感染の客船乗組員「ありがとう」 長崎出港、知事ら見送り

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出港するクルーズ船コスタ・アトランチカ=31日午後、長崎市

 31日正午前、長崎港内に汽笛を3度響かせ、全長292.5メートルの巨大な船体がゆっくりと離岸を始めた。長崎市の三菱重工業長崎造船所香焼工場の岸壁では中村法道知事や田上富久長崎市長らが見送った。掲げられたイタリア語の「航海の安全を」のメッセージ。デッキに出て手を振る乗組員は日本語で「ありがとうございました」。新型コロナウイルスの集団感染が発生したクルーズ船コスタ・アトランチカが出港した。
 4月20日に1人目の感染が確認され、乗組員623人のうち149人の感染が確認された。県は国立感染症研究所、長崎大、陸上自衛隊、災害派遣医療チーム(DMAT)、民間団体の支援を受け、乗組員の健康観察や船内の感染防御に取り組んだ。大半は船内で個室隔離されていたが、症状が悪化した乗組員が長崎市内の医療機関に搬送され、県の担当者は県民への医療提供体制を守ることとの狭間で頭を悩ませた。結果的に重症化したのは1人。死者は出ず、市中感染も確認されなかった。「出港の日を迎え、ひとまず安堵(あんど)しています」。出港を見届けた後、記者会見に臨んだ知事は表情を緩めた。
 香焼工場の対岸では多くの市民が出港を見守った。家族4人で来ていた長崎市の会社員、与賀田亮さん(36)は「長男がクルーズ船が好きで、いつも新聞の寄港情報を楽しみにしている。コロナ収束後は観光業のためにも毎日のように来てほしい」と願った。
 同市香焼町連合自治会の浜崎孝教会長(81)は「地元住民としてはひとまず安心しているというのが本音。ただ乗組員は船内の個室に隔離されていたので、ご苦労様と声を掛けたい」と気遣った。乗組員と交流があるタクシー運転手、大石孝志さん(49)は「また帰っておいで、という気持ち。(収束後に)長崎の人たちと交流を深めてほしい」と話した。
 田上市長は「対応に尽力された国、県、自衛隊、医療関係者、長崎大、すべての皆さまに感謝申し上げます」とのコメントを出した。